翻訳|epilogue
ギリシア語のエピロゴスepilogos(結語,跋詞)が語源。劇の締めくくりとなる部分で,劇冒頭に置かれたプロローグと対をなす。登場人物の一人の俳優か,作者の代弁を行う俳優が,劇の終りに舞台から直接観客に向かって語りかける納め口上である。古代ギリシア劇のエクソドスに類似しており,中世の宗教劇にもその萌芽的な形は見られる。しかしながら,形式的に整えられて最もよく利用されたのは,イギリス王政復古期から18世紀にかけてのことである。18世紀の終りになると,この劇的手法もしだいに人気を失い始め,19世紀に入ると使われなくなってしまう。王政復古期には悲劇,喜劇を問わず用いられ,観客にあいさつを行ったり,拍手を求めたりするだけでなく,当時の政治や社会状況についての機知に富んだ論評が含まれる場合もあった。エピローグが現代演劇で使われることはまれであるが,一般に,物事の終りや,劇,小説,詩,書物,音楽などの終結部をエピローグと呼ぶこともある。
執筆者:木村 健治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「閉幕の辞」とか「納め口上」と訳される。劇の本筋が終わったところで俳優の1人が舞台に登場して、いままで見てきた劇について、注釈、弁明、次回の公演の予告、ときには当時の政治社会問題への批評を加えたりしながら、観劇を観客に感謝するのを一般とする。すでにギリシア悲劇に萌芽(ほうが)がみられ、中世を経てイギリスの王政復古期に全盛を迎え、18世紀後半まで続いた古典的演劇様式の一部。19世紀に入ると写実主義演劇運動により不自然として廃止された。また、詩、小説などの終章や、オペラなど音楽に用いられることもあり、広義には物事の結びの意味に使用されることもある。プロローグ(前口上)の対(つい)の用語。
[高師昭南]
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