カミングズ(読み)かみんぐず(英語表記)Edward Estlin Cummings

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カミングズ」の意味・わかりやすい解説

カミングズ
Cummings, Edward Estlin

[生]1894.10.14. マサチューセッツケンブリッジ
[没]1962.9.3. ニューハンプシャー,ノースコンウェイ
アメリカの詩人,小説家,画家。 1915年ハーバード大学卒業,翌年修士号をとった。第1次世界大戦には野戦衛生隊の運転手として志願し,フランス北部に駐留中スパイの嫌疑を受けてフランス北西部の収容所に3ヵ月間拘禁された。その体験がのちに実験的な小説『巨大な部屋』 The Enormous Room (1922) となり,バニヤンの『天路歴程』を踏まえたこの小説はヘミングウェー,E.ウィルソンらの絶賛を浴び,T.E.ロレンスは「アメリカ人が書いた最良の戦争小説」と評した。戦後はニューヨークで2年間暮してから,「失われた世代」の作家らしく数年間パリで絵を学び,アンデパンダン展にも幾度か出品し,また E.パウンドやダダの詩人とも交遊。 24年帰国,30年には再びパリに渡り数年間を過したが,その後はニューヨークのグリニッチ・ビレッジに居を定めて創作に励んだ。彼の詩は句読点大文字を排し,活字を視覚的に配列するなど,実験的なものが多い。おもな詩集に『チューリップ煙突』 Tulips and Chimneys (23) ,『詩四十一』 XLI Poems (25) ,『&』 (26) ,『is5』 (26) ,『ビバ』 ViVa (31) ,『1/20』 (36) ,『詩五十』 50Poems (40) ,『1×1』 (44) 。ほか戯曲『彼に』 Him (27) ,ソ連紀行『エイミイ』 Eimi (33) などがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カミングズ」の意味・わかりやすい解説

カミングズ
かみんぐず
Edward Estlin Cummings
(1894―1962)

アメリカの詩人、小説家。マサチューセッツ州生まれ。ハーバード大学卒業後、第一次世界大戦に参戦し、フランス政府の手違いから捕虜収容所に監禁された。その体験は唯一の小説『巨大な部屋』(1922)となって生かされ、詩とも小説ともつかぬ実験的手法と、戦場を描かぬ戦争小説により注目を浴び、戦争小説の一傑作とされるに至った。詩人としては、徹底したことばの実験者といってよく、『チューリップと煙突』(1923)から始まる彼の詩作のほとんどは、I(アイ)の小文字化、単語の分割、数語の唐突な並置などの印刷上の実験に満ち、ダダイズムと台頭するシュルレアリスムへの関心も明らかにうかがえる。数多くの詩集のほかに、ハーバード大学での『私・六つの非講義』(1953)や紀行文などがある。

[原川恭一]

『飯田隆治訳『巨大な部屋』(1979・思潮社)』『河野一郎訳『チューリップと煙突』(『世界名詩集大成11』所収・1962・平凡社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android