オランダの物理学者。ドイツ国境に近いフローニンゲンに生まれる。1882年ライデン大学教授となり,94年同大学付属低温研究所(現,カメルリン・オンネス研究所)の所長となる。彼はJ.デュワーが98年に水素ガスの液化に成功したことを受けて1908年ヘリウムガスの液化に初めて成功,しかもその日のうちに液体ヘリウムの沸点が4.2Kであることを確かめた。次いで11年には水銀,翌年には鉛の超伝導を発見し,世界の低温物理学において文字どおりのパイオニアの役割を果たした。低温物理学の分野を開拓した業績に対し,13年ノーベル物理学賞が授与された。彼が当時低温物理学にかけた多くの夢,例えば超伝導磁石の実用化などは現在に至って実りつつある。
執筆者:渡辺 昻
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…ヘリウムは元素の中で最も沸点が低いため,液化されたのは気体の中の最後であり,1908年,カメルリン・オンネスによって初めて液体ヘリウムが得られた。ヘリウムは原子が閉殻構造であるため原子間の引力がきわめて小さく,また原子の質量が小さいために量子力学的零点振動が大きい。…
…しかし,それまでに蓄積された知識に基づいてより巧妙な方法が考案され,77年,L.P.カイユテとR.P.ピクテが,それぞれ独立に酸素(沸点-183℃)と窒素(沸点-196℃),98年にJ.デュワーが水素(沸点-253℃)を液化した。そして,1908年に最後のヘリウム(ヘリウム4)がカメルリン・オンネスによって液化され,液化の歴史が終わるとともに極低温の世界への幕が開かれたのである。ヘリウムの沸点は1気圧において-268.9℃,絶対温度で4.2Kである。…
…極低温領域で生ずる場合が多い。1911年オランダのH.カメルリン・オンネスが,約4.15Kで水銀の電気抵抗が突然0になるのを発見したのが最初で,その機構の理論的解明は57年,アメリカのバーディーンJohn Bardeen,クーパーLeon N.Cooper,シュリーファーJohn R.Schriefferによってなされた。この理論は彼らの頭文字をとってBCS理論と呼ばれるが,超伝導の発見からその解明までに長い時間がかかったのは,この現象がまったく量子力学的であり,いかなる古典的説明も成立しないためである。…
…一般に,電気抵抗は温度が下がると小さくなるが,0Kの近くになってもある有限の電気抵抗を示すのが通常の電気伝導である。オランダのH.カメルリン・オンネスは極低温を実現する装置の開発(1908年にはヘリウムの液化に成功,液化温度4.2K)と低温での物理学の発展に大きな寄与をした人であるが,1911年に水銀の電気抵抗が,約4K以下では測定できないほど小さくなることを見いだした。この現象は超電導と名づけられ,その後多くの金属,合金,化合物が極低温でこの状態になることが見いだされている。…
※「カメルリンオンネス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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