日本大百科全書(ニッポニカ) 「カワラバト」の意味・わかりやすい解説
カワラバト
かわらばと / 河原鳩
rock dove
[学] Columba livia
鳥綱ハト目ハト科の鳥。伝書鳩、ストラッサーほかの食用鳩など、飼育下で500種以上もの品種を生んだ原種である。野生の系統は、イギリスから、地中海沿岸、北アフリカ、アラビア、西アジア、インド、ヒマラヤまで、また中国の渤海(ぼっかい)内陸部にも自然分布し、大西洋のアゾレス諸島などには人為的に移された。海岸の崖(がけ)や岩山を好み、岩の割れ目に小枝と枯れ草で皿形の巣をつくり、2卵を産む。雌雄が交代で抱卵する。いったん形成されたつがいは、一方が死ぬまで続き、繁殖期でないときにもいっしょに生活する。草の種子を採食する。全長約33センチメートル、全身灰青色で、頸(くび)には金属光沢がある。腰は白く、翼に2本、尾の先端に1本の黒い帯があるのが特徴である。一度飼育されて伝書鳩などの品種になったものがふたたび野生化したものをドバト(堂鳩)とよび、さまざまな羽色の変化がある。ドバトは都会のビルや橋桁(はしげた)などに巣をつくり、カワラバトとも自由に交雑し子孫を残す。このためヨーロッパでは本来の野生の系統のものが減ってしまった。日本にいるものはすべてドバトである。
[竹下信雄]