ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カンパネラ」の意味・わかりやすい解説
カンパネラ
Campanella, Tommaso
[没]1639.5.21. パリ
イタリアの哲学者。ドミニコ会士。本名 Giovan Domenico Campanella。 1591年 B.テレジオの自然主義の影響下に『感覚によって証明される哲学』 Philosophia sensibus demonstrataを出版,異端のかどで捕えられた。許されてパドバに行きガリレイに会うが,1592,1596年に再三捕えられる。 1597年故郷に帰りスペイン支配下のナポリ王国に暮らす人々の窮状を見て,彼の理想とする神政によるユートピアの実現を考え,反乱を起こすが発覚,1599年捕えられ政治犯と異端という二重の罪状で 27年間獄につながれた。獄中で彼は『太陽の都』 La città del sole (1602) ,『形而上学』 Metafisica (1638) などを著わした。 1626年釈放とともに教皇庁に仕えたが,1634年スペイン王の手を逃れてフランスに行き学者や政府の好意を得,全集が刊行された。彼はテレジオの感覚論から出発するが,認識は感覚的受動によって対象に似たものとなった自己の認識であるとする。自己を形成する,能,知,愛の3基本性質は全存在に妥当する形而上学的原理であり,その完全性の度合いによって,神,精神,物質の3界が区別されるが,それを神に向けて統一する力が宗教である。彼の『太陽の都』は,形而上学者を祭司とし,能,知,愛の3役人によって統べられる平等,共産の理想国である。カンパネラは預言者的哲学者であると同時に,マドリガルやソネットの詩人でもあった。
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