ガイスラー管(読み)がいすらーかん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガイスラー管」の意味・わかりやすい解説

ガイスラー管
がいすらーかん

真空度が数十~数トル(1トルは水銀柱1ミリメートルの圧力)の冷陰極放電管。真空放電の実験とスペクトルの研究のため、ドイツのボン大学のプリュッカーJ. Plückerが同じ町の理化学機器工のガイスラーH. Geisslerに1857年に依頼してつくらせたので、この名がある。別に依頼主の名に基づいてプリュッカー管とよぶこともある。

 ガイスラー管は、真空放電の実験のほか、簡単な真空計として真空度の測定に用いられている。また、管内の気体原子のスペクトル研究にも用いられるが、その場合は管の中央部は細い。

 放電の様相は、数十トルでヘビの舌状の放電が始まり、数トルで管一面に広がった明るいグロー放電になる。さらに真空度があがると、この明るい陽光柱はだんだん短くなり、100分の1トル付近では全体が薄く光るようになり、さらに真空度をあげると黄緑蛍光が管壁に現れる。この蛍光は陰極から出る一種の放射線(電子)によるもので、同一物質でも温度によって異種のスペクトルを出すことなどとあわせて、ヒットルフJ. W. Hittorfとともにプリュッカーが実証していた。

[岩田倫典]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガイスラー管」の意味・わかりやすい解説

ガイスラー管
ガイスラーかん
Geissler tube

低圧気体放電管の1種。 1859年ドイツの機械技師 H.ガイスラー物理学者 J.プリュッカーの依頼でつくったもので,プリュッカー管ともいう。ガラス管中に圧力数 Torr程度の気体をアルミニウム電極とともに封入し,電極に高電圧をかければ放電が起る。スペクトル分析に用いるものは図のような形のもので,中央の細い部分で最も強いグローを放つ。また,管の一部を開口して真空槽につなぐと,簡単な真空計として使える。放電の状態が内部の気体の圧力によって変化し,放電で発する光の波長は内部の気体の種類に固有であるから,放電の際の発色光と形状から真空槽内の真空度と残留気体の種類がほぼ見分けられる。

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