生体に害作用のあるガスを吸入して起きる中毒で,急性中毒と慢性中毒がある。吸入するガスには,アンモニア,塩素,二酸化硫黄,オゾンなどの刺激性ガス,一酸化炭素,シアン化水素などの窒息性ガス,エチレン,アセチレンなどの麻酔性ガス,トルエン,ベンゼン,トリクロロエチレンなどのように造血器官や肝臓,中枢神経系に作用を及ぼす向臓器性ガスがある。吸入するガスの濃度が高い場合には急性中毒,低い濃度で蓄積性があり長期の場合には慢性中毒であるが,二硫化炭素のように急性中毒では中枢神経障害,慢性中毒では動脈硬化,高血圧というように現れ方の異なる場合もあり,それぞれ吸入ガスの性質によって中毒症状も多彩である。
執筆者:溝口 勲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ガス状の化学物質を吸入あるいは皮膚に接触することによっておこる障害をいう。このようなガスの種類は非常に多いが、生体に対する作用によって大別すると次のようになる。
(1)単純窒息性ガス アセチレン、アルゴン、ブタン、エタン、エチレン、ヘリウム、水素、メタン、ネオン、窒素、一酸化窒素、プロパン、二酸化炭素などが含まれる。
(2)上気道刺激ガス アンモニア、酢酸、二酸化硫黄(いおう)、ホルマリン、フッ化水素などが含まれる。
(3)肺刺激ガス 塩素、ホスゲン、二酸化窒素、オゾン、オキシダントなどが含まれる。
(4)化学的窒息性ガス 一酸化炭素とシアン化水素が含まれる。
なお、それぞれのガスとその作用などについては各化学物質またはその中毒の項目で解説されている。
[重田定義]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…第2次大戦後の有機合成化学,石油化学工業の進歩は,従来の毒物の種類を激増させるとともに,化学,金属などの製造業のみならず,建築,土木,農業,林業,その他多くの産業にも化学物質の広範な利用を生み出し,産業中毒は多くの産業にみられるようになった。 無機化合物のガス中毒の代表は,一酸化炭素,二酸化硫黄,硫化水素,塩素,水素化ヒ素などによるものである。無機金属では,水銀,鉛,亜鉛とその化合物などによるものである。…
※「ガス中毒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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