ガモフ(読み)がもふ(英語表記)George Gamow

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガモフ」の意味・わかりやすい解説

ガモフ
がもふ
George Gamow
(1904―1968)

アメリカのユダヤ系の理論物理学者。ロシアのオデッサ(現、ウクライナのオデーサ)に生まれ、レニングラード大学で学んだ。1928年学位を取得し、以後ボーアに認められてコペンハーゲンの彼の研究室で共同研究を、またケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所でラザフォードと研究した。その後、帰国してレニングラード(現、サンクト・ペテルブルグ)の科学アカデミーの研究員になったが、1933年、母国を離れアメリカに渡った。1934年からジョージ・ワシントン大学の物理学教授、1956年以降はコロラド大学教授を務めた。

 彼の最初の独創的な研究は、1928年に放射性原子核からα(アルファ)粒子が放出される機構を、波動力学トンネル効果によって説明したものであった。1930年には原子核破壊のためには、α粒子より陽子を使うほうが有利であること、また、重い原子核に液滴模型を使用することを提案した。一方、1929年には原子核に対する知識に基づいて、アトキンソンRobert d'Escourt Atkinson(1898―1982)、ハウターマンFriedrich Georg Houtermans(1903―1966)と協力して、太陽エネルギー熱核反応によるという結論を出した。さらに宇宙における元素起源を考察し、その理論は宇宙論に利用された。このほかに分子生物学におけるDNAの理論に対する貢献もある。学問的な論文を発表する一方で、『不思議の国のトムキンス』をはじめ多くの科学に関する通俗的な解説書を著し、一般の人々に科学を理解させるうえで大きな功績を残した。

[佐藤 忠]

『鎮目恭夫他訳『ガモフ全集』全16巻(1950~1959・白揚社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガモフ」の意味・わかりやすい解説

ガモフ
Gamow, George

[生]1904.3.4. オデッサ
[没]1968.8.19. コロラド,ボールダー
ロシア生れのアメリカの物理学者。レニングラード大学に学んだのち,ゲッティンゲン,コペンハーゲン,ケンブリッジなどで研究を続け,1934年アメリカに渡り,ジョージ・ワシントン大学教授,さらに 56年からコロラド大学教授をつとめた。α崩壊の理論 (ガモフ=コンドン=ガーニーの理論) およびβ崩壊の理論 (ガモフ=テラー遷移) を立て,さらに原子核の液滴モデルを提唱するなど,原子核物理学の発展に多大の貢献をなした。またこれらの理論を天体の構造,恒星の進化,元素の起源などの問題に適用し,多くの業績を上げた。特にビッグバン説により宇宙背景放射を予言した。一方生化学にも関心をもち,DNAが遺伝情報として機能することを提唱した。非専門家向けの解説的な著作も多く,邦訳もある。

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