デジタル大辞泉 「ビッグバン」の意味・読み・例文・類語
ビッグ‐バン(big bang)
2 1986年に実施された英国証券市場制度の大改革。手数料自由化、取引所会員権の開放などに代表される金融・証券自由化政策を骨子とする。転じて抜本的改革等をいう。
3 平成8年(1996)に橋本龍太郎首相が具体化を指示した、銀行・証券・保険の相互参入の促進など、護送船団方式によって守られてきた金融システムに対する改革案のこと。2になぞらえた呼称。金融ビッグバン。日本版ビッグバン。
翻訳|Big Bang
宇宙が火の玉として始まる瞬間を表すことば。ビッグ・バンは、宇宙の姿は永遠に不変であるとする「定常宇宙論」の提唱者であるF・ホイルが、ベルギーのG・ルメートルの「宇宙は原始原子として生まれた」という理論をラジオ番組で紹介したとき、揶揄(やゆ)するような表現として使ったことばである。しかし、このことばはこの理論を的確に表現していることから、よく使われるようになった。1948年、G・ガモフらは、ルメートルの仮説を発展させ、宇宙に存在する元素の起源を説明するために、宇宙は火の玉で始まったという理論を提唱した。
今日、ビッグ・バンとは、ルメートルの理論ではなくガモフの提唱した火の玉宇宙の始まりの瞬間を表すことばとなった。1929年、E・ハッブルによって宇宙は膨張していることが発見され、時間的にさかのぼれば宇宙は物質の密度がきわめて高い状態から始まったことになることがわかった。また、一般相対性理論の一つの解として宇宙が膨張することも、1922年、A・フリードマンによって、また、1927年、ルメートルによって示されていた。ガモフは原子核物理学の知識に基づき、宇宙初期では物質密度が高いだけでなく、もし温度もきわめて高かったとすれば、核融合反応により現在宇宙に存在するすべての元素が合成されるはずであるという、火の玉仮説を提唱した。この理論は、アルファーRalph Alpher(1921―2007)、ベーテBethe、ガモフGamowという3人の連名で発表され、著者の頭文字から、αβγ(アルファベータガンマ)理論とよばれている。高温高密度の中性子ガスで始まった宇宙では、中性子が崩壊して生じた陽子に中性子がくっつき軽い原子核がつくられ、さらにその原子核が次から次へと中性子捕獲とβ崩壊を繰り返しながらウラニウムに至るすべての元素が合成されるとしたのである。しかし宇宙初期で合成されるのは、水素、ヘリウム、リチウムなどの軽元素のみであることが、のちの理論や観測によって明らかになった。
しかし、宇宙が火の玉で始まった証拠である宇宙マイクロ波背景放射が、1965年に発見され、定常宇宙論は否定され、ビッグ・バン理論は不動のものとなった。
さらに「宇宙が膨張し温度が下がるにつれガスが固まり、恒星、銀河、銀河団など宇宙の構造がつくられていく」というシナリオは、多くの天文学的観測によって裏づけられ、今日の宇宙の標準理論となっている。
[佐藤勝彦 2017年5月19日]
宇宙のはじめの大爆発をいう。宇宙が,今から約150億年前に起こった大爆発によって生まれたとする宇宙起源説で,火の玉宇宙論とも呼ばれる。現在広く受け入れられている標準的膨張宇宙理論(標準宇宙論)は,ビッグバンを起源とするものである。そのため,しばしばビッグバン宇宙論は標準宇宙論と同一の意味でも使われる。
現在,宇宙が膨張していることは,遠方の銀河ほど大きな速度でわれわれの銀河系から遠ざかっていることからわかっている。その速度は100万光年離れた銀河に対して約15km/sである。この事実から,宇宙は過去にさかのぼればさかのぼるほど,高密度であり,約150~200億年前には密度が無限に高かったと考えられる。ビッグバン宇宙論は,宇宙の初期がこのように高密度であっただけでなく,同時に高温でもあったとする理論である。十分な高温高密度状態では,物質は原子核を構成する陽子や中性子に,ばらばらに分解した状態にある。宇宙の初期がこの状態にあると,それが急激に膨張し冷却する過程で,熱核反応によって核融合が起こり,さまざまな元素が合成される。実際の宇宙では,膨張速度と物質密度との関係から,宇宙の誕生後数百秒で熱核反応が終わり,ほとんどが陽子として残り,ヘリウムなどの軽元素がいくらか合成されたと考えられる。その後,宇宙はおもに陽子と電子からなる熱いプラズマ状態にあった。プラズマ状態では,光が物質と十分速く散乱・吸収・放出反応を繰り返しているため,この時期の宇宙は非常に不透明であった。約10万年後,宇宙の温度と密度は十分下がり,光はもはや物質をプラズマ状態に保つほど十分反応せず,陽子と電子は結合して中性の水素原子を形成し,宇宙は光に対して透明になった。これを宇宙におけるプラズマの再結合という。中性化した物質は,重力的に不安定となり,小さな密度のゆらぎが大きく成長できるようになる。こうして銀河や第1世代の星ができ,現在の宇宙の姿へと進化したと考えられている。
ビッグバンを宇宙の起源として最初に提唱したのは,ロシア生れのアメリカ人物理学者G.ガモフであり,1946年のことである。しかし,そのころはまだ,ビッグバンの直接の証拠は観測されておらず,少数の人々を除いて,ガモフの理論は,あまり着目されなかった。しかし,64年,アメリカの物理学者ペンジャスArno A.PenziasとウィルソンRobert W.Wilsonによって,3Kという非常に低温の光(宇宙背景放射)が宇宙を満たしていることが発見され,同時に,ピーブルスP.J.E.PeeblesやディッケR.H.Dickeらの理論物理学者によって,これが熱い初期宇宙の痕跡であることが明らかにされ,さらに,理論的に予見される宇宙初期の元素合成量が,観測事実とよく一致することが確認されてビッグバン理論は確立した。
最近,物質のより基本的な構造が明らかにされるに従って,宇宙論においても元素合成の時代よりさらにさかのぼった高温高密度の時代のようすが研究されており,物質そのものの起源やビッグバンそのものの起源といったより哲学的な問題が,物理の問題として解明されるのも夢ではなくなってきている。
執筆者:佐々木 節
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…そのような動きの中で,日本の従来の金融業に対する規制の強さは諸外国の金融機関の嫌うところとなり,東京市場が世界の金融市場の中心の一つたる地位を占められなくなる恐れが深刻化した。近時の銀行法をめぐる規制緩和の動きはそのような事態に対する政策的な対応を現すものであるが,なおいっそうの規制緩和を目ざす,いわゆる金融ビッグバンの動きが具体化しつつあり,銀行法は今後ともそのような流れと無縁ではありえない。銀行【来生 新】。…
…蔵相の諮問機関である証券取引審議会,金融制度調査会,保険審議会などは,首相の改革プランについて最終答申を1997年6月に出し,相互参入の促進,新たな金融商品の導入(金融派生商品の自由化等),コスト低減(株式取引手数料の自由化等),金融システムの健全性の確保を柱として,21世紀初めまでの改革の日程も打ち出した。これらの改革を総称して〈日本版ビッグバン〉という(イギリスのロンドン株式取引所のビッグバン=大改革になぞらえたもの)。 この間に1990年代初めのバブル経済崩壊以後,住宅金融専門会社の破綻(〈住宅金融〉の項参照),都市銀行の一つ北海道拓殖銀行の破綻(1997),大手証券会社の山一証券の自主廃業決定(1997)など,日本の金融制度をゆるがす事態が続発しており,預金保険機構の強化がはかられ(〈預金保険〉の項参照),また大蔵省から機能を分離した金融監督庁が98年6月に設立された。…
…組織形態は会員制の自治団体方式をとっており,法人格は有しない。1986年のいわゆる〈ビッグバン〉(後述)以前には,会員はすべて個人に限られ,顧客の売買注文を取り次ぐブローカーbrokerと,特定の銘柄につき自己勘定による売買を専門とするジョッバーjobberに分かれ,両者の兼業は禁止されていた。すなわちジョッバーは一般顧客からの売買注文を受けることができず,売買の相手先はブローカーないし他のジョッバーであった。…
… こうして50年代を境に,その後の観測や研究は,天文学ばかりでなく人間の宇宙観,自然観をそれ以前のものとまったく違うものにした。宇宙はおよそ200億年以前にビッグバンで爆発的に開闢したものであり,それ以来続いている膨張の中で元素も恒星も銀河も生まれ進化してきたのであり,われわれ自身もまさに宇宙進化の産物であり宇宙の一部であるという進化宇宙論の考えもそんな一例である。
【宇宙の現状】
[宇宙の階層構造]
観測から知られる宇宙の特徴はいろいろあるが,その一つの側面は宇宙の階層的構造である。…
…さらにスペースシャトルを利用してスペース望遠鏡やスペース天文台を運営する時代になりつつある。【藪内 清】
【最近の天文学】
[宇宙論]
膨張宇宙は,遠い銀河ほど遠ざかる速度が比例的に増大するE.ハッブルの関係式が一様等方宇宙に対するアインシュタイン方程式のフリードマン解と一致することにより,観測的にも理論的にも多くの支持を得ていたが,1965年アメリカのペンジアスA.PenziasとウィルソンR.Wilsonとが3Kの宇宙背景放射を発見して,ビッグバンと称する超高温超高密度の宇宙初期の大爆発モデルが確立した感がある。ビッグバンの初期は素粒子の宇宙で,ほぼ等量ある物質,反物質は光速で宇宙が膨張するにつれて重い粒子から対消滅し,余剰が物質として残るが放射優勢の宇宙となる。…
※「ビッグバン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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