ガンコウラン(読み)がんこうらん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガンコウラン」の意味・わかりやすい解説

ガンコウラン
がんこうらん / 岩高蘭
[学] Empetrum nigrum L. var. japonicum K.Koch

ガンコウラン科(APG分類:ツツジ科)の常緑小低木。ガンコウラン属には6種あり、北半球の高山や寒帯および南アメリカのアンデス山脈フォークランド諸島などに分布する。茎は長く地をはい、よく分枝し、枝は立って高さ10~20センチメートルになり、大きな群落をつくる。葉は革質、多数で互生し、線形、長さ4~6ミリメートルと小さく、縁(へり)が反り返る。雌雄異株。6月に紫黒色の小さい花が葉腋(ようえき)に開き、花弁萼片(がくへん)は3枚ずつある。雄花には雄しべが3本、雌花には雌しべが1本。果実は球形、径6~10ミリメートルの核果で、9月ごろ紫黒色に熟し、甘酸っぱい味で食べられ、ジャムや果実酒をつくる。中部地方以北の本州、北海道の高山帯に普通に生え、千島からカムチャツカ、朝鮮半島、中国東北部、東シベリアにも分布する。

小林義雄 2021年4月16日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガンコウラン」の意味・わかりやすい解説

ガンコウラン(岩高蘭)
ガンコウラン
Empetrum nigrum; crowberry

ガンコウラン科の常緑小低木で,本州中部以北の高山裸地などに生える。地上をはい,よく分枝して,長さ 60~90cmとなる。葉は線形で裏側に巻込み,長さ5~6mmの濃緑色で密に互生する。雌雄異株で,春に萼片,花びらともに3枚から成る小さい花をつける。雄花にはおしべが3本あり,雌花には6~9室の子房と濃い紫色の柱頭から成るめしべがある。夏から秋にかけて,直径 1cmぐらいの球形の核果をつくる。紫黒色でつやがよく,甘ずっぱい汁があり食べられる。ジャムや果実酒などを造る。北半球の冷温帯や高山に広く分布するが,ごく近縁の種で果実の赤いアカミノガンコウラン E. rubrumがアンデス山系の南端部にあり,両極分布の例として有名である。

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