南アメリカ大陸の南部,パタゴニア沖400kmの南大西洋に浮かぶ諸島。英語での正式名称はFalkland Islands and Dependencies。面積1万2173km2,人口2913(2001)。1833年以来イギリスの属領とされてきたが,現在に至るまでアルゼンチンとの領有問題で係争が続いている。アルゼンチン名はマルビナス諸島Islas Malvinasである。おもな島は東フォークランド島(アルゼンチン名ソレダード島)と西フォークランド島(マルビナス島)で,周りに200余の小島がある。主都スタンリーは東フォークランド島にあり,人口1989(2001)である。住民の大半はイギリス系。寒冷な気候で西風が強く,岩がちな荒涼たる地形から成る。主要産業は牧羊業で,羊は6万頭をこえる。経済はイギリス向け羊毛輸出に依存し,皮革,獣脂も若干輸出するほか,航行・捕鯨の基地としても重要である。牧羊業,貿易の大半が1851年設立のフォークランド諸島会社などイギリス系企業によって営まれてきた。また近年,沿岸の石油資源,水産資源が注目を浴びつつある。
同諸島の領有権をめぐるイギリス,アルゼンチン両国の係争の歴史は19世紀にさかのぼる。イギリス側は1592年イギリス人航海士ジョン・デービスが到来し,1690年イギリス人フォークランド卿にちなみ同諸島に命名した。1774年経済的理由で同諸島のイギリス人居住地を撤去したが,1833年イギリス人が再度入植,43年イギリス総督府を設置して総督を任命したことによって,現在に至るまでイギリス領であると主張する。第1次大戦中の1914年12月8日,同諸島沖でイギリスとドイツの海戦が行われた。他方,アルゼンチン側は同諸島へは16世紀前半すでにスペイン人かポルトガル人が到来,1774年にはスペインの総督府を設け,1816年スペインからの独立により同諸島はアルゼンチン領に組み入れられたとする。領土問題は1964年国連に提訴され,65年の国連総会で平和的領土交渉の開始が決議された。しかし交渉がはかどらないまま,75年イギリスのシャックルトン調査団が同諸島の資源・経済調査を行い,両国の大使引揚げを招いた。79年に大使交換が再開されたが,それもつかのま,82年4月2日アルゼンチンは同諸島へ侵攻し,フォークランド戦争が勃発した。最新型の兵器による戦闘で,両国は多大の人命,戦費を失い,同年6月14日アルゼンチンの敗戦が決定した。両国間の同諸島領有問題は戦後も継続し,外交交渉にゆだねられることになった。
執筆者:今井 圭子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
南アメリカ大陸最南端、ホーン岬の北東770キロメートルの大西洋上にあるイギリス領の諸島。別称マルビナスMalvinas諸島。東フォークランド島(面積6630平方キロメートル)と西フォークランド島(面積4550平方キロメートル)の二つの主島および大小200以上の島々からなる。面積1万2173平方キロメートル、人口2564(1996)。中心地は東フォークランド島東岸のスタンリー。寒冷多雨気候のため樹木は育たず、農業は牧羊が中心で、羊毛をイギリス本土に輸出している。1984年産業開発公社が設立され、漁業や畜産物加工を奨励している。イギリスからはアセンション島経由で週3回の航空便がある。
1592年イギリス人のデービスが到達し、1764年フランス人が、翌65年イギリス人が入植した。1770年スペインがフランス人領土を手に入れイギリス人を駆逐した。さらに1806年アルゼンチンがスペインを追い払い主権を宣言(1820)したが、イギリスは認めず1833年イギリスの直轄植民地とした。
1982年4月2日、アルゼンチン軍が突然フォークランド諸島に侵入しイギリス総督を追放した。翌日開かれた国連安全保障理事会では、アルゼンチン軍の撤退を可決したが、アルゼンチンは譲らず、イギリスとの間で戦争となった。イギリスは大機動部隊を派遣し、激戦の結果6月14日同島を奪回した。
[林 晃史]
(2013-1-16)
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…1756年にカナダへ行き,副官としてイギリスとの戦争に加わった。戦後は自費で南大西洋のフォークランド諸島に入植地を建設したが,67年にスペインに譲り渡すことになり,この代償としてフランス初の太平洋探検隊の隊長のポストを得た。1766‐69年ブドゥーズ号でフランス人としては初の世界一周を果たした彼は,ソロモン諸島北西端の島とその南側の海峡にその名をとどめている。…
※「フォークランド諸島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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