キタテハ(読み)きたては

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キタテハ」の意味・わかりやすい解説

キタテハ
Polygonia c-aureum

鱗翅目タテハチョウ科のチョウ。前翅長 27mm内外。翅の外縁にあらい鋸歯状の凹凸がある。翅表は黄褐色で黒色斑があり,裏面は黄色地に褐色の不規則な黄色帯が樹皮状模様を表わす。後翅裏面中央にC字形の小白色紋がある。秋型は濃色で,翅の外縁の凹凸が著しい。幼虫はクワ科のカナムグラの葉を食べ,成虫クヌギなどの樹液や花に集る。成虫で越冬。第1代の成虫は5~6月に出現し,以後秋まで発生を繰返す。北海道,本州,四国,九州,朝鮮,台湾,中国,インドシナに分布する。近縁シータテハ P. c-albumは,本種に似るがより山地性で,翅の外縁の切れ込みが深く,翅表・裏ともに濃色である。また後翅裏面のC字状紋は大きく,秋型ではきわめて明瞭である。分布域は本種より西方へ広がり,ヒマラヤ,ヨーロッパ,アフリカ北部に及ぶ。日本産は亜種 P. c. hamigeraという。食草はニレ科のハルニレアキニレオヒョウエノキが主であるが,クワ科のカラハナソウイラクサ科コアカソなども食べる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キタテハ」の意味・わかりやすい解説

キタテハ
きたては / 黄蛺蝶
[学] Polygonia c-aureum

昆虫綱鱗翅(りんし)目タテハチョウ科に属するチョウ。日本では北海道から九州にかけて分布するが、寒冷地では近似種シータテハが優勢で本種は少なく、暖地では本種が優勢でシータテハは希種となる。外国では朝鮮半島、中国、台湾、トンキンに分布し、東アジアの特産種。はねの開張60ミリメートル内外。はねの表面は橙(だいだい)色で黒斑(こくはん)があるが、裏面は枯れ葉模様で表面とまったく異なる。成虫態で越冬し、暖地で年4、5回程度の発生、寒冷地では年2回程度の発生と思われる。幼虫の食草はカナムグラ、アサ、カラハナソウ(ホップ)などのアサ科植物。幼虫は葉を綴(つづ)ってその中に潜んでいる。

白水 隆]


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