改訂新版 世界大百科事典 「キチジョウソウ」の意味・わかりやすい解説
キチジョウソウ (吉祥草)
Reineckea carnea Kunth.
日本と中国大陸に分布する1属1種のユリ科の多年草。スズラン属やオモト属に近縁であると考えられており,両者をつなぐ性質をもつ系統学的には興味深い植物である。根茎は長くはい,よく分岐する。根生葉は根茎の末端に叢生(そうせい)し,線形。花茎は秋から冬にかけて伸長し,葉がなく,高さ20cm内外で,斜上する葉にかくれたように咲く。和名はこの植物はめったに花をつけず,花をつけたときには吉事があるという言い伝えに由来すると言われる。このような言い伝えが生まれた理由の一つは,花が秋遅くに咲き,葉にかくれて目だちにくいことによるものであろう。花と花茎は淡紫色で花には両性花と雄花の分化がある。縁起のよい和名のためか,しばしば栽培される。繁殖力もあり,冬緑性なので縁石にそって植え込んだりするのによい。漢方では咳止めと止血の効ありとして薬用とする。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報