食の医学館 「キンメダイ」の解説
キンメダイ
《栄養と働き》
タイと名前がついていますが、タイとは別の魚です。大きな目が海の中で金色に輝くことから、キンメダイという名前がつきました。東京では「キンメ」と呼びます。
日本では茨城以南の太平洋側と、海外ではインド洋、大西洋などの水深100~800mに生息する深海魚です。
体色は海の中では淡い赤ですが、捕獲され市場に出回るころには鮮紅色になります。「めでたい」に通じることから、尾頭つきで祝いの魚として用いられることもあります。全長は40cm前後です。
〈カリウムが高血圧、マグネシウムがイライラに効く〉
○栄養成分としての働き
キンメダイは、たんぱく質、脂質が、他の白身魚にくらべて豊富に含まれています。育ち盛りの子どもや激しいスポーツをする人など、たんぱく質や脂質の消費量が多い人は、積極的にとりたい食材です。
カリウム、マグネシウム、リン、亜鉛(あえん)、銅などのミネラルも豊富に含まれています。
カリウムは、ナトリウムとともに水分を吸収して細胞内の浸透圧を維持し、過剰なナトリウムの弊害を抑えて血圧の上昇を制御する働きがあり、また、神経と筋肉の機能を正常に保つ働きもあります。したがって、高血圧の予防や手足のしびれ、ストレスの緩和などに効果的です。
マグネシウムは、カルシウムとともに、神経の伝達機能にかかわる酵素やホルモンを活性化する働きがあります。ストレスやイライラ、神経症などの予防、改善に役立ちます。
リンは骨や歯を丈夫にし、細胞の成長と修復を助け、銅は貧血の予防、亜鉛は味覚異常や肌のトラブルの予防に働きます。
〈ビタミンB12、E、鉄分が複合的に貧血・冷え症を防ぐ〉
ビタミン類の含有は少ないのですが、そのなかでB12、D、Eの効果は見逃せません。
B12は、神経系を正常に働かせるとともに、葉酸(ようさん)と協力してヘモグロビンの合成を助け、赤血球をつくります。貧血予防に効果的です。
Dはカルシウムの吸収を助け、骨や歯をまもり、筋肉の機能を維持するなどの作用があります。カルシウムの吸収率が下がると骨が弱くなるばかりか、情緒不安定におちいることもあります。Eは、老化やがんの原因になる過酸化脂質の生成を抑え、活性酸素を消去する作用があります。また血管を若く保ち、血液の流れをよくするので、冷え症に有効。さらに更年期障害を改善したり、生殖機能を維持したり、環境汚染から肺をまもったりします。
《調理のポイント》
近ごろではスーパーなどで1年中見かける魚になりましたが、脂(あぶら)がのっている旬(しゅん)は12月~3月。体色の赤が鮮やかで、目やウロコが金色に光っているものが鮮度の高い印です。日が経つにつれ皮がたるみ、肉の色も黒っぽく変色するので、注意して選びましょう。
新鮮なら刺身で食べられますが、身がやわらかく味も淡泊なため、塩焼き、煮付け、照り焼き、フライ、味噌汁、ちり鍋などに適しています。また味噌漬けや粕漬けにすると身が引き締まっておいしくいただけます。