魚貝,豆腐,野菜などを水煮にして,ポンスしょうゆで食べるなべ料理。魚貝ではタイ,タラ,フグ,オコゼ,ホウボウ,コチ,カワハギ,カキなどが用いられ,野菜やキノコではハクサイ,ホウレンソウ,シュンギク,ダイコン,ミツバ,シイタケ,エノキタケなどが適する。魚は骨付きのままぶつ切りにし,フグを除いては卵巣や肝臓も用いる。野菜は,ミツバ,シュンギク以外はあらかじめゆでておくことが多い。薬味にはもみじおろしとアサツキの小口切りなどを添える。タイ,タラ,フグを主材料とするものは,それぞれタイちり,タラちり,フグちり(またはてっちり)と呼び,タイ,フグは刺身をとったあとのあらを利用することが多い。石井研堂の《明治事物起源》に〈ちりの流行〉なる一節があり,その引用文献によると,ちりは古来九州・四国地方で行われていた料理法だとするが,明治以前の文献に記載があるとの報告はまだないように思う。ただし,明治中期には九州・四国方面から伝播(でんぱ)して,東京でもおおいに行われたようである。
執筆者:鈴木 晋一
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鍋料理の一種。大阪で多くみられ、味もよく酒客の好む料理。深鍋にだし昆布を敷き、水を6~7分目に加えて煮立て、昆布を引き上げる。これに塩一つまみを加え、シラウオ、カキはそのまま、タイ、スズキ、コチ、タラ、アイナメ、ホウボウ、カワハギなどの魚は下ごしらえをしてさっと塩をふるか、薄い塩水をくぐらせてから用いる。魚によっては、あら、白子(しらこ)、肝(きも)なども用いる。ふぐちりはフグだけを単独に用いる。野菜はダイコン、ミツバ、シュンギク、シイタケなどが適する。豆腐はそぎ切りにして加え、ダイコンは半月またはいちょうの薄切りにする。酢、しょうゆ、酒を三つ割りにした調味酢をつけて食べる。青みにはワケギなどがよい。煮えにくいものから先に鍋に入れ、煮ながら供する。魚の身を鍋で煮ると身がちりちりと縮むところから、「ちり」の名がついた。
[多田鉄之助]
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