ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ギッシング」の意味・わかりやすい解説
ギッシング
Gissing, George Robert
[没]1903.12.28. フランス,サンジャンドリュズ
イギリスの小説家,随筆家。中流下層の生活の写実的描写で知られる。薬剤師の家に生れ,幼児より秀才の名高く,奨学金を得てマンチェスター大学に学んだ。2度の不幸な結婚が原因で放浪生活をおくり,極度の貧困を経験した。 21歳頃から小説家を志し,『暁の労働者』 Workers in the Dawn (1880) で文壇に登場。そののち『群衆』 Demos (86) ,『どん底』 The Nether World (89) ,『新三文文士街』 New Grub Street (91) ,『漂泊の身』 Born in Exile (92) などで,自己の体験に基づいて,零落した知識階級の貧しい生活を微細に描き,イギリス自然主義文学の代表者と目されるにいたった。ギッシングは下層生活の醜悪さを描いたけれども,社会主義には共感せず,むしろ悲観主義に傾き,後年にいたるに従って,ますます古典的教養の世界に憧れるようになった。イタリアに遊んだ際の『イオニア海のほとり』 By the Ionian Sea (1901) ,フランスに移り住んで,やや生活の安定を得た頃の自伝的随想『ヘンリー・ライクロフトの私記』 The Private Papers of Henry Ryecroft (03) は,彼の随筆家としての才能を示すもの。評論としては『チャールズ・ディケンズ論』 Charles Dickens: a Critical Study (1898) が名高い。
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