国連が公式に調査・提出した女性に対する暴力に関する報告書。国連人権委員会(現、人権理事会)の決議に基づき、「女性に対する暴力」特別報告官であったスリランカの法律家ラディカ・クマラスワミRadhika Coomaraswamy(1953― )が調査・報告したことから彼女の名がついている。報告書は本文のほか、第1付属文書、第2付属文書からなり、このうち1996年に提出された第1付属文書は旧日本軍の従軍慰安婦問題を取り上げている。これを機に、従軍慰安婦問題は日本と韓国をはじめとするアジア諸国との間の外交問題に発展したほか、慰安婦問題について日本政府に歴史的責任と謝罪を求めた2007年のアメリカ下院決議採択などに影響したとされる。
クマラスワミは1994年に国連人権委員会の特別報告官に就任し、2002年まで毎年、国連人権委員会へ家庭内暴力などの女性への暴力とその原因や結果に関する報告書を提出した。また、日本、韓国、北朝鮮を訪問(うち北朝鮮は代理人が訪問)し、元慰安婦、元軍人、政府関係者、歴史研究者らから聞き取り調査を行い、1996年に第1付属文書「戦時における軍の性奴隷制度問題に関して、朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国及び日本への訪問調査に基づく報告書」を提出した。同文書は、慰安婦を「軍事的性奴隷」であると規定し、日本政府に対して(1)国際法違反を認め、法的責任を受け入れる、(2)元慰安婦に個人補償をする、(3)慰安所などに関する書類や資料を完全に公開する、(4)被害者に書面による公的謝罪をなす、(5)教育カリキュラムを改正し慰安婦問題への認識を高める、(6)徴集などにかかわった責任者をできる限り処分する、以上の合計6項目を勧告した。国連人権委員会はクマラスワミの活動を「歓迎」し、付属文書を含むクマラスワミ報告書に「留意」するとして報告書を採択した。ただし第1付属文書は、植民地であった韓国・済州島(さいしゅうとう)で慰安婦を強制連行したとする吉田清治(1913―2000)の証言を引用。2014年(平成26)8月に、朝日新聞社がその証言は虚偽であったとして一連の慰安婦報道を取り消すと発表した。これを受け、日本政府は同報告の一部を修正するよう要求したが、クマラスワミは「報告者の立場を離れており、修正などをする立場にない」「(吉田証言は)慰安婦の証拠の一つに過ぎない」などとして修正を拒否した。
[編集部 2015年4月17日]
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