日本大百科全書(ニッポニカ) 「クリルタイ」の意味・わかりやすい解説
クリルタイ
くりるたい
Quriltai
13、14世紀のモンゴル帝国の国会を表す語。同時期のペルシア語文献(ラシードの『集史』など)で使用されている。モンゴル語で「集まる」という動詞quri- に由来する語である。モンゴル帝国初期の記録『元朝秘史』では、ただ一度、「聚会(しゅうかい)」をフリルタと記している。また、モンゴル人民共和国(現モンゴル国)の国会はイフ(大)・ホラル(会議)と称する。これらフリルタやホラルはクリルタイと同類の語である。クリルタイは、皇帝(ハン)の選出、外国遠征の決定、法令の発布などの国事を議する際に、皇帝自ら、あるいは前皇帝の皇后ないしは一族の代表者が招集した。開催時期は主として春夏で、参加者はチンギス・ハンの一族のもの、姻族、文武百官である。クリルタイへの参加は、皇帝への服従を表明する儀礼としての意味もあり、不参加者を斬刑(ざんけい)に処する法令が発布されたこともある。新皇帝選出の際には、帝位を握ろうとする各派は、それぞれにクリルタイを開催して、自派の正当性を競い合うこともしばしばであった。クリルタイ開催中は大宴会が催され、皇帝から宝物の下賜も行われた。開催場所については定まっていない。
[松田孝一]