日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケルスス」の意味・わかりやすい解説
ケルスス(Publius Juventius Celsus)
けるすす
Publius Juventius Celsus
(77以前―129以後)
ユリアヌスとともにローマ古典時代の最盛期を代表する法学者。法務官、執政官(2回)、ハドリアヌス帝の顧問官など顕職を重ね、父の後を継いでプロクルス学派の法学校の学頭となった。剛直な性格の人といわれ、頭脳明晰(めいせき)で鋭敏な感覚の持ち主であり、法律問題に対してつねに独創的な解決を試みた。相続財産の善意占有者と悪意占有者を区別する元老院議決を提案したことは有名である。また、概念の定式化に優れ、「法は正善および衡平の術である」とか、「法律の全部をみず、その一部のみに依拠して判決しあるいは解答するのは法律家たる者のなすべきことではない」とか、さらに「法律を知るとは、その用語をとらえることではなく、その意義および適用を理解することをいう」など、さまざまな定義や法諺(ほうげん)を残している。主著に『法学大全』Digesta39巻がある。
[佐藤篤士]
ケルスス(Aulus Cornelius Celsus)
けるすす
Aulus Cornelius Celsus
(前30ころ―後45ころ)
ローマの百科事典作家。皇帝ティベリウス(在位14~37)時代に活躍した。その著作『技術』Artesは、農業、医術、軍事技術、雄弁術、哲学、法律の六つを扱ったといわれるが、現存するのは『医学について』Dere medicina8巻だけである。その内容は、食餌(しょくじ)療法と治療学と病理学(第1~2巻)、内臓の病気(第5~6巻)、外科の病気(第7~8巻)となっている。ことに外科術の部分が貴重で、顔と口の整形手術、鼻の茸腫(じょうしゅ)の除去、甲状腺腫(こうじょうせんしゅ)の除去、結石の切開、扁桃腺(へんとうせん)の除去などを述べ、そのほかケルスス禿瘡(とくそう)(脱毛症の一種)の説明もある。
[平田 寛]