改訂新版 世界大百科事典 「ケルスス」の意味・わかりやすい解説
ケルスス
Aulus Cornelius Celsus
ローマの著作家。生没年不詳,ティベリウス帝の治下(後14-37)に活動。学問全般を網羅する大規模な百科全書を著したとされるが,〈ヒッポクラテスは医学を哲学から分離した〉という名言を序説に掲げた《医術について》と題する作品しか伝存しない。これは古代ギリシアのヒッポクラテス医学派,アレクサンドリアの医学派などのすぐれた著作を踏まえて,生理・病理・薬剤・外科手術など,さらには養生法に至るまで,医学全般を全8巻の中に明確・適切に解説したもので,ガレノスの膨大な著作とともに,医学史研究にとって不可欠の史料である。彼自身は医者ではなかったともいわれるが,結紮(けつさく)法を叙述した歴史的な意義は大きく,また肝臓・胃などの病に対する食養生の話は今もなおその価値を失わない。
執筆者:大槻 真一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報