コウゾリナ(その他表記)Picris hieracioides L.var.glabrescens(Regel)Ohwi

改訂新版 世界大百科事典 「コウゾリナ」の意味・わかりやすい解説

コウゾリナ
Picris hieracioides L.var.glabrescens(Regel)Ohwi

サハリンから九州山野路傍などに普通にみられ,ざらざらした葉や茎と鮮やかな黄色頭花が特徴的なキク科二年草。ざらつくのは褐色剛毛が生えているためで,顔剃菜(かおぞりな)あるいは剃刀菜(かみそりな)が転じてコウゾリナとなったといわれる。ロゼットで越冬し,根出葉はへら形でタンポポに似ており,切るとやはり白い乳液が出るが,剛毛があるので区別できる。春,30~90cmの茎を直立し,その上部舌状花のみからなる直径2cmの頭花をつけ,10月ころまで咲き続ける。総苞は黒みを帯びた緑色で,花床には毛がある。赤褐色果実は,羽毛状に分枝する冠毛がつき,風によって散布される。若菜をゆでて,浸し物,あえ物にすると美味である。また家畜飼料に適している。本州中部以北の高山帯に生えるものは,丈がやや低く,総苞が黒色で花冠の色も濃く,カンチコウゾリナと呼ばれる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウゾリナ」の意味・わかりやすい解説

コウゾリナ
こうぞりな
[学] Picris hieracioides L. subsp. japonica (Thunb.) Krylov

山野に普通に生えるキク科(APG分類:キク科)の二年草。ロゼットで越冬し、春に茎を伸ばして高さ30センチメートルから1メートルになる。葉はへら形。切ると白色の乳液が出る。全体に褐色で鉤(かぎ)状の剛毛があり、ざらざらした感触から顔剃菜(かおぞりな)あるいは剃刀菜(かみそりな)とよばれたものが転じてコウゾリナになったといわれる。5~10月にかけ径2~3センチメートルの、舌状花のみからなる黄色の頭花を多数つける。痩果(そうか)は赤褐色で、汚白色の冠毛があり、風散布される。樺太(からふと)(サハリン)から九州、中国にも分布する。ゆでた若菜は食用となり、家畜の飼料にも適する。カンチコウゾリナは本種の高山型で、丈が低く、総包は黒色で、濃黄色の花をつける。

[森田龍義 2022年2月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コウゾリナ」の意味・わかりやすい解説

コウゾリナ(剃刀菜)
コウゾリナ
Picris hieracioides var. japonica

キク科の越年草。日本各地の山野に普通にみられる。冬から春にかけては根生葉がロゼットをつくる。のちに高さ 60~90cmの茎が出て,長さ6~15cmほどの披針形で鋸歯のある葉を互生する。茎の上部につく葉は次第に小型となる。茎はしばしば紫紅色を帯び,硬い毛が生えている。初夏に,茎の上部の葉腋から枝を出し,径2~3cmの黄色の頭状花をつける。頭状花は舌状花だけでできている。総包は緑色,茎葉は硬い毛が生えていて肌に触れると痛い。また傷つけると白い汁を出す。若い葉を食用とする。

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百科事典マイペディア 「コウゾリナ」の意味・わかりやすい解説

コウゾリナ

北海道〜九州,サハリンの暖〜温帯に分布し,山野の路傍にはえるキク科の二年草。高さ30〜80cm,切ると白汁が出,全体に褐色または赤褐色の剛毛がある。頭花は径2〜2.5cm,黄色の舌状花からなり5〜10月に開く。果実は赤褐色,紡錘形で,羽状の冠毛がある。

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