日本大百科全書(ニッポニカ) 「コオリガモ」の意味・わかりやすい解説
コオリガモ
こおりがも / 氷鴨
long-tailed duck
[学] Clangula hyemalis
鳥綱カモ目カモ科の鳥。全北区の北極圏に広く繁殖し、冬季も亜寒帯にとどまる。日本では北海道、青森県までをおもな越冬地域とし、流氷の押し寄せるオホーツク海にもみられる。北極圏ではもっとも多いカモで、雄はツンドラの池の島などに縄張りをもち、雌はむしろそれに関係なくコロニー状に営巣し、外敵を群れで防ぐ習性のあるアジサシのコロニーの中に営巣するものもある。1腹6~7卵で、北極の短い夏に適応してきわめて成長が早く、抱卵は24~26日、雛(ひな)も35日で飛力を得る。潜水が非常に巧みで水深の深い沖合いを好み、通常15メートル、最深例では60メートルも潜り、海中のエビなど甲殻類を好んで食べる。雄は「アオーナ」という特有の大声を出すが、これは沖合いにすむため連絡声として発達したものと思われる。海面上2~3メートルを水平にやや遅い速度で飛び、落ちるように着水する。雄は全長59.5センチメートル、中央の尾羽2枚が細長く伸びる。冬羽は白と黒褐色、夏羽では上体が黒褐色で、黄褐色の縁のある細長い肩羽が特徴となり、繁殖後は他種のエクリプス(雌型のじみな羽色)にあたる中間的な羽色を経て冬羽となる。この換羽方式はカモ類では独特でライチョウと似ているが、冬羽の白色は流氷への保護色と考えられる。雌は全長38センチメートル、尾の長羽はなく、羽色は雄に準ずる。
[黒田長久]