こころの相談機関

六訂版 家庭医学大全科 「こころの相談機関」の解説

こころの相談機関
(こころの病気)

変わりゆく精神病院

 かつてはこころに問題が生じた時に相談するところといえば、精神科病院に行くしかありませんでした。お気づきですか、「精神病院」といわずに「精神科病院」といっているのに。そうです、内科医院とか外科病院というように「精神科病院」というようになってきました。つまり、精神科もほか疾患と同じように考えられるようになってきたのです。

 これまでは人里離れたところにあり、高い塀に取り囲まれ、窓には鉄格子がはまっているという(いか)めしさが「精神病院」でした。こうした精神科病院も大きく脱皮しつつあります。採光に気を配り、カラーコーディネートされた外壁内装が増えています。こうした外見ばかりでなく、その内実も豊かになってきました。遅ればせながら精神科病院も一般の病院に近づこうと努力をしています。

 病院はもともと診療機関です。相談機関ではありません。しかしながら、どの一般病院も相談機関としての機能を取り込もうとしています。なぜなら、病気になってから治すよりも早めに相談をして病気にしないことが重要だとわかってきたからです。ですから「こころの病気」も同じです。やはり“病気かな”と思う前に相談してほしいと思います。

 変わり始めた精神科病院を見学してみてください。治療スタッフの構成も大きく変わりました。以前は医師看護師しかいなかったような精神科病院でしたが、精神保健福祉士もいますし、もちろん臨床心理士がいる病院も増えています。医療制度も複雑になりましたし、経済的な保障なども仕組みが入り組んでいますので、医師や看護師だけでは応じきれなくなっており、社会福祉士をおいている病院も増えています。

クリニックや公的機関

 こころの相談を受け付ける機関はいろいろあります。精神科を標榜(ひょうぼう)していなくても、神経科心療内科といった診療科名を標榜しているクリニックのなかには、相談を受け付けてくれるところがあります。クリニックは本来は診療機関で相談機関ではないので、本人を伴って行かないと断られてしまうこともあります。

 これに比べれば、全国の都道府県政令指定都市にある精神保健福祉センターは、公的機関でもあり、相談を専門に受ける機関です。県によっては精神保健福祉センターといわず、こころの健康センターといっているところもあります。

 また、公的な相談機関といえば保健所があります。保健所は統合されて数が減ってきましたが、経験豊かな保健師たちが相談の第一線に立っていますし、週によっては精神科医が直接相談に乗ります。

その他の相談機関

 急速に増えているのが、地域で開業している国家資格をもつ精神保健福祉士や、国家資格にはなっていませんが臨床心理士たちです。診療機関ではなく、まったくの自由開業で相談料もまちまちです。ただ最近では、相談料を明示しているところが多くなりました。

 電話でこころの相談をすることもできます。「いのちの電話」もそのひとつですが、本来自殺予防を目的として設けられたものなので、相談が殺到すると回線がパンクしてしまいます。そのほか、地域によっては青少年を対象にする電話相談などもあります。電話相談の専門会社といってもいいところが相談を受けている場合もありますが、こころの相談はやや専門性が高いので、相談員に専門家を配置しています。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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