改訂新版 世界大百科事典 「コシアキトンボ」の意味・わかりやすい解説
コシアキトンボ
Pseudothemis zonata
トンボ目トンボ科の昆虫。体長約45mm。体は濃黒色,または黒褐色で,腹部の3~4節が雄では顕著な乳白色,雌ではこの両節が黒斑を交えた黄色を呈するのでこの名がある。翅は長く幅広く透明であるが,後翅の基部の大きな紋と前翅の先端の小部分は濃褐色となる。本州,四国,九州のほか,台湾,朝鮮半島南部,中国中南部,ベトナム北部に分布し,青森県は分布の北限である。6月中に羽化し,7~8月には平地の木陰のある比較的有機物に富んだ池沼の水面上を飛び回る。成熟した雄は水面に近く飛翔(ひしよう)するが,未熟な雄はより上空8mくらいまでの空間を,未熟な雌はそれより上空にいることが多い。幼虫はこのような停水中に育ち,羽化までに1年,または2年を要する。産卵は単独の雌で行うが,水面に浮遊している木片などに一層に粘着させる。本属には,ほかに1種だけが,マレー半島からタイにかけて分布するが,その行動も本種によく似ている。
執筆者:朝比奈 正二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報