改訂新版 世界大百科事典 「このわた」の意味・わかりやすい解説
このわた
〈海鼠腸〉と書く。ナマコの腸でつくる塩辛のことで,《延喜式》には能登などから貢納されたことが記されている。室町後期には酒の肴として,小さな桶に入れて供されることが多かった。吸物の材料ともされたようで,《料理物語》(1643)には,淡味のみそ汁を沸騰させたところへ入れて出す,と記されている。現在はいりこをつくるとき抜き出した腸を材料とすることが多く,砂やよごれを除いて20~30%の塩を加え,半日くらい置いてから,たる詰めにして熟成させる。寒中につくったものがよく,1週間くらいで食べごろになる。各地でつくられるが,江戸時代には三河のものが有名で,越前のウニ,肥前のからすみとともに名声をうたわれたものである。
執筆者:鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報