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労働法 ろうどうほう labour law

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

労働法
ろうどうほう
labour law

資本制労働の諸関係を労働者の生存権という法理念に立脚して規律する法体系。資本主義の発展に伴って労使の力関係の不平等に起因する労働条件劣悪化と搾取が顕著になり,同時に労働者が団結して労働運動を展開するようになった。

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デジタル大辞泉の解説

ろうどう‐ほう〔ラウドウハフ〕【労働法】

資本主義社会において、労働者が労働によって生存を確保しうることを目的とする法規の総称。労働組合法労働関係調整法労働基準法最低賃金法職業安定法労働者災害補償保険法など。

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百科事典マイペディアの解説

労働法【ろうどうほう】

資本主義社会において労働者の諸権利(労働基本権)を保護し,労使関係の円滑な運営を図り,また雇用政策と失業の救済によって継続的な労働力の確保を目的とする諸法規の総称。

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人材マネジメント用語集の解説

労働法

・労働法とは、労働法という法律が制定されているのではなく、労働に関する法律の総称であり、以下のように分類されている。
1.労働条件に関する法律
労働基準法
労働安全衛生法
最低賃金法
・賃金の支払い確保等による法律

2.雇用の確保・安全のための法律
雇用対策法
職業安定法
障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)
職業能力開発促進法
労働者派遣法(正式名称:職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律)

3.労働保険社会保険に関する法律
・労働者災害補償保険法
雇用保険法
健康保険法
厚生年金保険法

4.労働者福祉の増進に関する法律
中小企業退職金共済法
勤労者財産形成促進法
・勤労青少年福祉法
男女雇用機会均等法(正式名称:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)
育児・介護休業法(正式名称:育児休業介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)

5.労働組合に関する法律
労働組合法
労働関係調整法

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世界大百科事典 第2版の解説

ろうどうほう【労働法】

人間の労働者としての側面における諸関係を規律する法。労働法が独立した法領域であるといわれるためには,その対象が他の法領域においては処理しえないものであること,および労働法独自の統一的基本原理が存在することが必要である。
[労働法の展開]
 労働法は,資本制経済体制の下で発生する労働問題を解決するための法として発達してきた。資本制経済の下での労働問題は産業革命の進行とともに発生し,以来それは相互に関連する二つの系列の問題となって現代に至っている。

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大辞林 第三版の解説

ろうどうほう【労働法】

労働関係・労使関係および労働者の地位の保護・向上などについて規定する法規の総称。労働三法のほか、職業安定法・最低賃金法・雇用保険法・労働者災害補償保険法など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

労働法
ろうどうほう
labour law英語
Arbeitsrechtドイツ語

労働者の使用者に対する関係にかかわる法規範の総体をいう。

労働法とは何か

今日、多くの人は雇用されて働いて、報酬を得ることで生活している。雇用の機会を得ることができるかどうか、どのように雇用されるかは、働く者がどのように生きていくか、にとって重大な問題である。労働法は、このように雇用されて働く労働者と雇用する側の使用者との関係をめぐり生じる諸問題を規整する法の総体をいう。したがって、民法や刑法などとは異なり、労働法という名の単一の法律があるわけではない。労働法は、雇用対策法、職業安定法などの「労働市場の法」、労働基準法および労働契約法、最低賃金法などの「個別的労働関係法」(労働保護法)、労働組合法、労働関係調整法を中心とする「集団的労働関係法」(労働団体法)、の三つの分野から構成されるが、その共通した理念は、資本主義社会において労働・生活する労働者の生存権あるいは人間の尊厳の具体的保障にある。[寺田 博]

労働法の成立と展開


市民法と労働関係
どのような働き方をするかは、人が生きていくうえで切実である。過重な労働はときとして健康破壊や死につながる。ことに使用者に雇用されて働く労働者にとっては、働き方を自分で決めることはできない。使用者との合意(=契約)によって働き方は決定されることになるが、両者の力関係の圧倒的な相違によって合意される働き方の内容は労働者に不利なもの、すなわち低賃金と劣悪な労働条件にならざるをえなくなる。資本主義の発展は、そうした働き方の決定方式を社会に広く及ぼし、労働者階級の貧困は深刻な社会問題となる。社会的に広汎に広がっていく労働者の貧困に対して、労働者の人間的な生活を確保しようとする二つの大きな動きが生まれてくる。一つは、労働者保護のために国家が労働者の働き方を規制し、労働条件の最低基準を定立する動きであり、もう一つは、貧困からの脱出を目ざして労働者自身が団結し、労働組合とその活動の法的承認を求める動きである。
 この二つの大きな動きは、互いに影響を及ぼしながら発展し、その運動に押されて労働法は生まれてくる。
 労働者保護と労働組合の法的な承認を主たる柱とする労働法は、近代市民法の胎内から生まれてきたということができる。すべての人間をいっさいの身分的拘束から解放された自由・平等・対等な市民としてとらえる市民法の原理は、封建的な身分的拘束から人々を解放し、資本主義社会の展開をもたらしたという面においては優れたものであった。しかし、市民法(=民法)が掲げる三つの基本原則、「私的所有権の絶対性」、「契約の自由」、「過失責任主義」は、使用者のもとで雇用されて働き、賃金を受け取る労働者と使用者の関係(労働関係)に適用されたとき、労働関係も対等・平等な労働者と使用者の自由な意思によって結ばれた契約関係(=雇用契約)としてとらえる。そして、締結された雇用契約は、労働者と使用者の双方を拘束することになる。契約は拘束する、という原則が労働者と使用者という経済的には不平等な関係に適用されると、労働者は圧倒的に不利な立場に追いやられる。なぜなら、生産手段を所有する使用者とは異なり日々自己の労働力を売らなければ(働かなければ)生活できない労働者は、仕事を求めるたくさんの失業者との競争もあって、どのような劣悪で不利な労働条件であったとしても受け入れざるをえない。どのような内容の賃金であれ労働条件であれ、いったん自由な意思によって合意された契約は、市民法では是認され、その結果は使用者には利潤を、労働者には貧困をもたらす。しかも、使用者はそのように購入した労働力を自由に利用し、処分できる権利をもつ。労働力は生きた労働者と切り離すことができない「商品」であるがゆえに、労働者は使用者の指揮命令のまま働くことを余儀なくされる。こうして、市民法のとらえる自由・平等・対等な労働者と使用者の関係は、実質的には不自由・不平等・隷属な関係に転化する。
 さらに、契約の自由は使用者の採用の自由、契約の解約(=解雇)の自由を意味し、労働者は絶えず求職の困難や解雇による失業の脅威にさらされた。職を求める労働者には、営利職業紹介業が介在し、賃金のピンはねや強制労働が横行した。
 こうした雇用関係のもとでの劣悪な労働条件や長時間労働による労働者の酷使は、必然的に労働災害の多発をもたらす。しかし、ここでも市民法の過失責任の原則が適用されると労働災害は労働者の自己責任とされ、労働者が労働災害で被った健康被害、生命の喪失への補償を使用者に求めることもきわめて困難であった。
 このような労働者階級の窮乏化を背景に、労働者の生存と使用者からの自律を求める労働組合運動が生まれてくる。しかし、賃金や労働条件の改善を求める団結活動も、市民法により違法な存在とみなされる。労働組合という団結そのものが、個々の労働者と使用者の間の取引の自由を制限するものとして、ストライキのような団体行動は雇用契約上の労働義務違反や業務阻害行為として、市民法により厳しく禁圧された。
 資本主義発展の初期の段階における労働者階級のこうした困窮の状況は、当時の市民法のもとでは解決されることはなかった。よりよい生存を求める労働者の運動は、二つの方向で市民法原理の修正を迫ることとなった。労働者保護のための法の制定と、労働者の団結承認の法の制定である。こうして労働法は二つの方向で生成し、展開することとなった。[寺田 博]
労働法の生成と展開
労働条件について法律による直接的な規制を目ざしたものが労働者保護法である。労働者保護法は、労働条件や職場環境について一定の基準を定め、その実効性を確保するために監督制度や罰則を適用して、その遵守を使用者に強制するものである。
 1802年、イギリスで最初の工場法が制定されて以降、19世紀中ごろからその他の国でも展開をみる。当初は、鉱山や工場における年少者や女性労働者を対象とする恩恵的・例外的な立法としてスタートし、内容も労働時間や安全衛生などに限定された低水準のものであったが、その後しだいに基準が改善され、適用対象も成人男子労働者にも拡大し、規制の領域も休日・休暇、さらには最低賃金へと労働条件全体に及ぶものとなる。
 労働災害については、「過失責任の原則」が修正される。労働者の業務上の災害に対しては、使用者の過失の立証を要せずに(無過失責任)使用者から一定額の補償を受けることのできる労災補償制度が樹立され、それはさらに労災保険制度に発展する。
 20世紀になると、失業問題に対して国の職業紹介や職業訓練サービス制度が導入され、失業者に対して失業保険を給付し、営利職業紹介事業を規制する法が制定された。さらに解雇に対しては使用者の解雇権を規制する立法も成立する。
 日本では、1911年(明治44)になってようやく工場法が制定されるが、内容的には低水準のものにとどまった。国際的には、1919年にILO(国際労働機関)が設立され、国際的な労働基準の形成と普及が図られることとなる。
 他方、労働者の団結の承認、労働組合活動の自由を求める運動は、当初、国家により徹底的に弾圧され、厳しく処罰されたが、それでも労働組合運動はやまることなく、19世紀の後半にはヨーロッパで団結禁止法制が廃止され、団結の放任政策がとられ、20世紀になると積極的に団結を承認するという段階に入る。(1)労働組合とその活動に対する国家的な抑圧からの解放、(2)労働組合に対する使用者の干渉の排除、(3)労働組合とその活動に対する市民法上の責任の排除、を内容とする積極的団結放任政策は、1919年のドイツ・ワイマール憲法による団結権の保障、1935年のアメリカのワグナー法において現実化された。
 日本では、第二次世界大戦の終了まで労働組合は厳しい禁圧体制のもとに置かれていたが、敗戦後の1945年(昭和20)、旧労働組合法が抑圧体制からの解放を鮮明にし、翌1946年の日本国憲法第28条で団結権、団体交渉権、団体行動権が保障されたことで、労働組合に対する積極的承認が実現した。[寺田 博]

労働法の対象と理念


労働法の対象
労働法が対象とする労働は、みてきたように、労働一般ではなく、あくまでも他人に雇用されて労働し、賃金を支払われる関係(=賃労働関係)である。労働法がその対象の独自性を追求するために用いてきたのが「従属労働」の概念である。この点で労働法は従属労働に関する法とされる。
 労働法は、雇用契約の当事者としての使用者と労働者が法的には自由・平等・対等な主体とされながらも、現実には労働者が使用者に従属せざるをえないことを法的事実として承認し、その従属性から生ずるさまざまな弊害を緩和するものとして形成されてきた。従属労働とは、労働者の多くが労働過程において使用者の指揮命令に服従して労務を提供せざるをえない地位にあること、すなわち「人的従属性」を中核として、さらにこれに「経済的従属性」と「階級的従属性」の要素を結び付けた概念である。経済的従属性とは、労働者が労働条件決定過程においても使用者に対して圧倒的不利な経済的立場に置かれていること、階級的従属性とは使用者に雇用されることなくして労働者は自己の生活を維持できない階級的な地位にあることを意味する。労働法は、このような従属労働関係のもとに置かれている従属労働者に適用される法である。労働法の独自性は、労働の従属性を規制対象とする点にある。
 労働法における「人間像」は、市民法がすべて人を抽象的個人としてのみとらえたのに対して、なんらかの社会に帰属し、社会的弱者、経済的困窮者という立場にある社会的実在としてとらえる。労働法の人間像(=労働者像)は、市民法の抽象的人間像から、いわば「生きた人間」としての具体的人間像へと転化する。労働法ではまた、労働者個人のみならず、労働組合という社会的集団も法主体としてとらえることから、国家と個人との間に労働組合という社会集団も法認され、市民法の個人主義法的性格に集団主義的な要素が加えられている。市民法の個人主義的「人間像」に対置して「社会的存在」としての人間像をとらえる社会法という視座からは、労働法は社会保障法とともに社会法の法分野に属する。[寺田 博]
労働法の理念
労働法の人間像、労働者像は労働法の基本理念と結び付く。従属労働のもとに置かれた労働者の労働と生活を直視してそこから派生する諸問題の解決を目ざす労働法の理念は、労働者の「人たるに値する生活」(労働基準法1条1項)の実現を目ざすものであり、その意味では、生存権(憲法25条)こそがまず労働法の主たる理念となる。労働者が実質的な自律を目ざし、労働条件の決定に関与し、実質的な意味での自由・対等を実現していくためには、生存権にとどまらず、労働者の人間としての尊厳(憲法13条)の実現が不可欠であり、人間の尊厳も労働法の指導理念となる。[寺田 博]
労働法の存在形式
法の存在形式のことを法源といい、裁判において裁判官の判断基準となるべき規範を意味する。一般には制定法が法源のうちでもっとも重要であるが、労働法の場合には施行規則も重要である。とくに労働基準法の規定は大綱的なものであるから、その施行のために必要な細目的事項を定める施行規則の役割は大きい。また、厚生労働省が労働行政の実際にあたり発する訓令、通牒(つうちょう)などの解釈例規は、実務上、裁判上の解釈に影響を与えている。
 判例が独自の法源かどうかについては議論があるが、労働法において判例はきわめて重要な役割を果たしている。日々発生する労使紛争は流動的、発展的であるため、立法による対応には限界がある。したがって実際の問題処理について判例に依拠せざるをえない場合が多い。解雇権濫用法理や安全配慮義務理論が一種の判例法とよばれるのも、こうした事情による。2007年(平成19)に制定された労働契約法は、判例法を立法に取り込んだものである。
 労働法の法源の最大の特色は、就業規則や労働協約のような労使による自主的な規範の設定を立法自体が尊重し、労働協約の規範的効力(労働基準法16条)のように特別な法的効力を付与していることにある。労働法が基盤とするのは労使が対抗する場であることから、制定法で画一的に規制することに適さず、こうした社会的自主法に法源を求めたのである。就業規則や労働協約、労働組合規約などの社会的自主法のみならず、労働慣行もまた法源となる。
 労働法に固有な法源として、国際労働法とよばれるILO条約(国際労働条約)・勧告がある。1919年の創設以来、ILOの採択した条約は180を超え、国際労働法典を形成し、世界各国の「基準的立法案」として機能している。条約は批准によって国内法の法源としての効力をもつことになる。しかし、日本の条約批准数が48と先進国のなかでは最低レベルにあることを考慮すると、多数の国により批准された条約は「確立された国際法規」(憲法98条2項)として、さもなければ、少なくとも憲法を含む法規の解釈基準としての法源性をもつべきと解される。ILOのほかにも国際連合、OECD(経済協力開発機構)、EU(ヨーロッパ連合)などの国際機関の採択した条約、指令、判決、報告などがある。このうち、とりわけEUの結成に伴うEU労働法は、世界のなかの地域的労働法の形成として重要である。[寺田 博]

労働法の体系と憲法・国際人権規約

労働法は、個々の労働者と使用者の関係を規律する個別的労働関係、労働者の集団的活動と使用者(または使用者団体)との関係を規律する集団的労働関係、の二つの領域を中心に体系化が図られてきた。前者の領域をカバーするものが個別的労働関係法(労働保護法)で、個々の労働者と使用者の間の労働契約や労働条件基準などを規律する。日本の制定法としては、労働基準法を中心に最低賃金法、労働安全衛生法などがある。後者は集団的労働関係法(労働団体法)とよばれ、労働者の団結体である労働組合の結成、組織、運営および労働組合と使用者またはその団体との団体交渉、争議行為などを規整する。労働組合法、労働関係調整法などがこれにあたる。この二つの領域からなる労働法の体系に加えて、1973年(昭和48)の第一次石油危機を契機とする低成長下で雇用・失業問題が労働法に密接に関連する法の領域と意識され、「雇用保障法」ないし「労働市場の法」という独立した第三の領域が確立された。これは、雇用が成立する以前の労働者と使用者の求職・求人関係を対象とし、雇用対策法、職業安定法、雇用保険法などの法が含まれる。
 労働法の体系に即して日本国憲法をみると、雇用保障や失業対策に関する「労働市場の法」については、憲法は第27条1項において国民の勤労の権利および義務を定め、労働権を保障する。「個別的労働関係法」は憲法第27条2項が「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準」について、労働基準法や最低賃金法などの労働保護法の制定を命じている。「集団的労働関係法」については、憲法第28条が勤労者の団結権、団体交渉権、および団体行動権を保障している。27条、28条の基礎には、憲法第25条の国民の生存権保障の理念がある。生存権保障の基本原則は「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」(労働基準法1条1項)という労働条件原則で具体化され、労働法全体の指導原理となっている。
 国際法についてみると、これら三つの領域の権利は社会的人権規定の一環として保障され、これらの人権が人間に固有の尊厳に由来するものであることが宣明されている。すなわち、世界人権宣言は「すべて人は、労働し、職業を自由に選択し、公正かつ有利な労働条件を確保し、及び失業に対する保護を受ける機会を有」(23条1項)し、さらに「すべて人は、自己の利益を保護するために労働組合を組織し、及びこれに加入する権利を有する」(同条4項)と宣言する。これを受けて、国際人権規約A規約「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」は、「すべての者」に「自由に選択し又は承諾する労働によって生計を立てる機会を得る権利」(6条)と「公正かつ良好な労働条件を享受する権利」(7条)を保障し、かつ労働組合を結成し、加入する権利などの団結権(8条)を認める。これは、すべての労働者に、雇用の機会を求める場合には、なんらの差別もなく、自由に選択し承認できる使用者・職種などの条件のもとで働く雇用保障法上の権利が、また一定の使用者のもとで労働する場合には、公正かつ有利な労働条件を享受する労働保護法上の権利が保障されていること、さらにすべての労働者が、労働市場においても、あるいは雇用関係の場においても、その経済的・社会的地位向上のために団結し団体行動する権利を有することを明らかにしている。そして、こうした権利の享受を通して「人間の尊厳」に値する生存が志向されているのである。[寺田 博]

労働法の現状と課題

憲法の理念のもとに形成、体系化されてきた戦後労働法は、高度経済成長期以降の大企業を中心とした日本的労使関係のもとで展開する。終身雇用、年功制、企業内組合を三つの柱とする日本的雇用慣行は労働法の解釈、運用に大きな影響を与えた。しかし、高度経済成長の終わる1970年代以降、その見直しが進められる。
 1990年代の長期不況を背景に、ことに1995年(平成7)の日経連(日本経営者団体連盟)の「新時代の日本的経営」が終身雇用、年功序列賃金について抜本的な見直しを提言したことを契機として、日本的労使関係は大きく変質し、(1)パート・派遣労働者などの増加による雇用形態の多様化、働き方の変化、(2)リストラの名のもと正社員の解雇・退職の強要による長期雇用慣行の空洞化、(3)賃金・人事管理における年功よりも能力・成果を重視する傾向、などが顕著となる。
 国は構造改革、規制緩和策をとり、こうした経営政策を助長するために労働法の規制緩和を推し進める。1998年の労働基準法改正(有期契約の上限期間の延長、企画業務型裁量労働制の導入など)、1999年の労働者派遣法改正(派遣業務のネガティブリスト化)、職業安定法改正(営利職業紹介の原則自由化)、2003年(平成15)の労働基準法再改正、労働者派遣法の改正、などである。
 こうした一連の労働法改正によって、戦後労働法の基本原則は大きく修正された。経営政策の転換と労働法制の規制緩和は大量のワーキングプア層を生み出し、かつて、「一億総中流」といわれた日本社会は、一挙に貧困率が増大し、貧富格差が広がり、深刻な格差社会へと転落した。格差拡大をもたらした最大の要因は、正規労働者に比べ賃金が圧倒的に低い非正規労働者の増加や非正規労働者間の格差の拡大など、労働者間の格差拡大にある。このような労働者間格差を是正するために、2007年のパート労働法や最低賃金法の改正がなされ、また、偽装派遣などに対する労働者派遣の規制強化を求める声に応じた形で、2012年に労働者派遣法が改正された。しかし、肝心な登録型派遣や製造業派遣禁止は見送られている。他方、従来の正社員労働者に対しても、その過酷で異常な長時間労働や「偽装管理職」などにみられる法の逸脱に対する規制の強化も求められている。これに対し、企業経営者の側からは、経済のグローバル化による企業間競争を生き残るために、さらなる規制緩和を求める声も強い。
 こうしたなかで、労働法は従来の適用範囲や基本構造について再検討を迫られている。同時に、女性、高齢者、外国人労働者、障害者などの権利をどのように保障・実現するか、という重要な課題の解決も迫られている。[寺田 博]
『沼田稲次郎編『労働法事典』(1979・労働旬報社) ▽沼田稲次郎著『労働法入門』(1980・青林書院新社) ▽西谷敏著『労働法における個人と集団』(1992・有斐閣) ▽日本労働法学会編『講座・21世紀の労働法』全8巻(2000・有斐閣) ▽角田邦重・毛塚勝利・浅倉むつ子編『労働法の争点』第3版(2004・有斐閣) ▽柳屋孝安著『現代労働法と労働者概念』(2005・信山社) ▽浜村彰著『ベーシック労働法』第2版増補版(2006・有斐閣) ▽菅野和夫著『労働法』第8版(2008・弘文堂) ▽西谷敏著『労働法』(2008・日本評論社) ▽外尾健一著『労働法入門』第7版(2009・有斐閣) ▽荒木尚志著『労働法』(2009・有斐閣) ▽土田道夫・豊川義明・和田肇著『ウォッチング労働法』第3版(2009・有斐閣) ▽下井隆史著『労働法』第4版(2009・有斐閣) ▽中窪裕也・野田進・和田肇著『労働法の世界』第9版(2011・有斐閣) ▽浅倉むつ子・島田陽一・盛誠吾著『労働法』第4版(2011・有斐閣) ▽大内伸哉著『労働の正義を考えよう――労働判例からみえるもの』(2012・有斐閣) ▽水町勇一郎著『労働法』第4版(2012・有斐閣) ▽水町勇一郎著『労働法入門』(岩波新書) ▽浜口桂一郎著『日本の雇用と労働法』(日経文庫)』

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