日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴイセン」の意味・わかりやすい解説
ゴイセン
ごいせん
Geusen ドイツ語
オランダ語ではヘーゼンという。「乞食(こじき)」の意で、16世紀ネーデルラントにおいてスペインの圧政に対抗して同盟した貴族の呼称。トレント公会議の決定に基づいて異端審問を強行したスペイン王フェリペ2世に対し、ナッサウ伯ルートウィヒ、ブレーデローデ伯ヘンドリックらが中心となって1565年同盟が結ばれた。翌66年4月、彼らはブリュッセルの総督邸に集結し、総督(女公)マルゲリータ・ディ・パルマに対し統治改善の請願を行ったが、その際バルレーモン伯シャルルが女公に「たかがゴイセン(乞食)の群れにすぎませぬ」といったことからこの呼称が始まったとされる。4月8日彼らは集会を開いたが、このとき乞食袋を身にまとって現れたヘンドリックが「乞食」のためにと祝杯をあげるや、「乞食万歳」の歓声がおこった。以後ゴイセンは、それまでのカトリックとカルバン派の連合的性格を失い、主としてカルバン派の集団となり、スペインに対する公然たる抵抗運動を展開し、ネーデルラント愛国者の名称となった。1567年フェリペ2世から派遣されたアルバ公は恐怖政治を行い、エグモント伯、ホールン伯をはじめ多数の処刑者を出したが、こうした強硬策を前に国外に逃れた者はゼー・ゴイセンZee Geusen(海の乞食団)を組織、スペイン船などを襲撃した。72年彼らはネーデルラントに上陸、ホラント、ゼーラント両州の諸都市を奪回し、以後ウィレムを指導者として独立運動の中核的存在となった。
[磯見辰典]