翻訳|sideboard
洋家具の一種。皿,フォーク,スプーンなどを収納する戸棚と,引出しを備えた食器戸棚,配膳の際のサービング・テーブルserving tableの機能を兼ねた食堂用の家具。
サイドボードは中世の領主館のホールですでに使われているが,ルネサンス時代には食堂用の重要な家具の一つになった。それは教会の祭礼用に使う聖器を収納するクレダンスcredence(祭器台)の形式をもとにして,甲板の下に引出し,その下に戸棚を備えた形式が基本的である。イギリスやフランスでは17世紀になると下部は引出しと戸棚,上部が皿などを飾る展示用の棚(ドレッサーdresser)から成る形式のものが流行した。ウェールズ地方のサイドボードはこの典型的なスタイルである。18世紀には浅い引出しを備えたテーブル形式のものが主流となり,18世紀中期には建築家R.アダムや家具師T.チッペンデールによって,テーブルの左右に壺形のナイフ・ボックスをのせた戸棚をセットにした新形式のものが現れた。イギリスの家具師シェアラーThomas Shearerは互いに分離していたテーブル,引出し,戸棚の3要素を一体化したサイドボードを設計し,それらは家具師ヘプルホワイトやシェラトンに受け継がれ,西欧の現代のサイドボードの基本形式が確立された。19世紀にはこのサイドボードからワイン・テーブルなど各種のサービング・テーブルが派生した。日本では洋風,和風いずれのインテリアにも調和しうる低い横型のものが主流で,居間や応接間にも置かれる。
執筆者:鍵和田 務
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
元来は食器を収納し配膳(はいぜん)に使われる食堂用の戸棚をさしたが、現在ではもっと広く、居間や応接間で茶器などを入れる飾り棚の意味に使われている。もとの形式は、引出し付きテーブルの左右にカップボードを組み合わせたもので、16世紀にイタリアやフランスで流行した。ヨーロッパではイギリスの家具デザイナー、ジョージ・ヘップルホワイトによって18世紀にその形が完成したといわれている。
[小原二郎]
…16世紀のイタリアでは,貴族の邸館の大広間に置いて高価な食器類を収納・展示するためのクレデンツァcredenzaと称する低い食器戸棚が流行した。これは本来中世期の教会で古くから祭礼用の聖具類を収納する祭器台を世俗の食器戸棚に改良したもので,現代のサイドボードの源流とみることができる。イギリスではエリザベス1世の時代からカバドとよぶ食器棚が現れ,収納用の戸棚と展示棚を組み合わせたものと,上下2段を展示用の棚としたもの(コート・カバドcourt cupboard)の二つのタイプがみられた。…
※「サイドボード」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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