改訂新版 世界大百科事典 「サケビドリ」の意味・わかりやすい解説
サケビドリ (叫鳥)
screamer
カモ目サケビドリ科Anhimidaeの鳥の総称。南アメリカ特産で3種が知られている。体型はガン類に似て,頭が小さく,体が太めである。全長60~90cm。くちばしは比較的短く,先がかぎ状に曲がる。脚は強く,太く,痕跡的な水かきがあり,歩くのも泳ぐのも自由で,灌木の上などにもよく止まる。翼の前端には角質のつめが2本ずつあり,外敵に対して強力な武器として使われる。著しい解剖学的特徴として,肋骨にかぎ状の突起がなく,骨には多くの気胞があり,ペリカン類のように皮下に海綿状の空気層をもっている。地上や水辺にすみ,大きな羽音を立てて力強く飛ぶ。餌は草とその種子などである。巣は湿地の地上に小枝や枯茎を50cmほどの高さに粗雑に積み上げてつくり,1腹4~6個の卵を産む。抱卵は雌雄交代で行い,抱卵期間は40~44日。雛は孵化(ふか)直後から歩くことができる。らっぱをおもわせるような大きな声で鳴くので,この名がある。
カンムリサケビドリChauna torquata(英名southern screamer)は全長約90cm。くび以下の体は暗灰褐色で,顔は淡赤色,襟は黒い。後頭に短い冠羽がある。ブラジル南部からアルゼンチン北部まで分布し,農耕地,草原,広い湿地などにすむ。ツノサケビドリAnhima carnuta(英名horned screamer)は全長約85cm。体は全体に黒く,白色や銀白色の羽毛が混じっている。頭頂に前方へカールした10~15cmの長さの角質の棒状の凸起がある。ベネズエラからブラジル南部およびボリビアまで分布し,湖沼の散在するサバンナ,広い湿地,川沿いの開けた森林などにすむ。ほかにクロクビサケビドリC.chavaria(英名northern screamer)がベネズエラ,コロンビアにすむ。
執筆者:柳沢 紀夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報