日本大百科全書(ニッポニカ) 「サケビドリ」の意味・わかりやすい解説
サケビドリ
さけびどり / 叫鳥
screamer
鳥綱カモ目サケビドリ科に属する鳥の総称。この科Anhimidaeは南アメリカに3種があり、ツノサケビドリAnhima cornutaはベネズエラからブラジル、ボリビアに、カンムリサケビドリChauna torquataはブラジル南部、ボリビアからアルゼンチンに、クロエリサケビドリC. chavariaはベネズエラ、コロンビアに分布する。全長約69~90センチメートル。大形のガンぐらいの頑強な体で、広くて浮き草の多い湿地をゆっくり渡り歩き、水生植物やその種子を食べる。飛び立ちは重いが、翼がきわめて幅広く、初列風切(かざきり)が強度に分離するため、高空に上昇して円を描いて長時間帆翔(はんしょう)し、大声を発する。地上でもときに大群になり、とくに夜間、数キロメートルも届く鳴き合いを行う。皮膚に裸区はなく羽毛は体全面に生え、骨は含気性に富み、皮下には小空胞による空気層があり、翼角に2本の棘(とげ)がある。嘴(くちばし)はキジ類に似てとがり、足は頑丈でやや長く足指も長いが、水かきはその基半部のみにある。群集性があるが雌雄は永久つがいを形成し、単独営巣性で、水上に草や水草を積み重ねてつくる巣は、ときに浮き巣となる。1腹4~6卵で白色、雌雄とも抱卵し、約42日で孵化(ふか)する。雛(ひな)は早成性で、刷り込み性が強く、人間にもよくなれ、大声を発する習性から番犬がわりになる。
[黒田長久]