日本大百科全書(ニッポニカ) 「サン・ポル・ルー」の意味・わかりやすい解説
サン・ポル・ルー
さんぽるるー
Saint-Pol-Roux
(1861―1940)
フランスの詩人。ポール・ルーPaul Rouxともいわれる。マルセイユの近くのサン・アンリに生まれる。1890年代に始まる「仏20世紀詩の夜明け」つまり近代詩と現代詩の境界に位置する。同時代のジャリやブルトンなど超現実主義の詩人たちと同じく、最初は象徴主義詩人として出発する。その特色は奔放で奇抜なイメージをふんだんに盛り込むところにあり、超現実主義の「自動記述」écriture automatiqueの手法をいち早く導入する。やがて、観念的現実主義idéoréalismeというものにひかれ、ブルターニュ地方の辺地に隠棲(いんせい)し、自然と交感しながら孤独なイメージを追求するが、1920年代に再発見されて、超現実主義運動の引き金となり、同運動の先駆者とみなされる。こうした傾向の代表詩集としては『聖体行列の祭壇』Les Reposoirs de la Procession(1893~1907)がある。第二次世界大戦初期のドイツ軍のフランス占領時代に、アラゴン、デスノス、ベルコールらと抵抗運動を展開した。しかし、ナチス兵士の暴虐の犠牲となって住居を焼かれ、目前で家族を虐殺されたルーは、この不幸に堪えられず、まもなくブレストの病院で没した。
[榊原晃三]
『イヴ・デュプレシス著、稲田三吉訳『シュールレアリスム』(1963・白水社)』