シエナ大聖堂(読み)シエナダイセイドウ

デジタル大辞泉 「シエナ大聖堂」の意味・読み・例文・類語

シエナ‐だいせいどう〔‐ダイセイダウ〕【シエナ大聖堂】

Duomo di Sienaイタリア中部、トスカーナ州の都市シエナにあるゴシック様式の大聖堂。12世紀半ばに着工され、14世紀に完成。外壁は白と暗緑色大理石による縞模様で覆われ、内部床面も旧約聖書を題材にした大理石による象嵌が施されている。ジョバンニ=ピサーノファサードの装飾を手がけたほか、ニコラ=ピサーノらによる説教壇がある。洗礼堂にはギベルティドナテロらによるレリーフを施した洗礼盤が置かれている。1995年、大聖堂プブリコ宮殿カンポ広場がある旧市街は「シエナ歴史地区」の名称で世界遺産(文化遺産)に登録された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シエナ大聖堂」の意味・わかりやすい解説

シエナ大聖堂
しえなだいせいどう
Duomo di Siena

イタリアにおけるもっとも豪奢(ごうしゃ)なゴシック式聖堂で、中部イタリアのシエナ市にある。12世紀中期に起工され、造営期間は13、14両世紀にわたる。1215年に主要部分の建設がほとんど終了し、64年にクーポラ(円蓋(えんがい))が完成、84~95年にジョバンニピサーノによってファサード(正面)下部の装飾が完了し、1313年にカンパニーレ(鐘塔)が建立され、完成を目前にしながら工事は停滞していた。ところが1339年に至り、おりから造営が進行中のフィレンツェの大聖堂と覇を競うべく、これまで構築された建物を翼廊に転用する巨大な新大聖堂の計画が提案される。そしてただちに新計画による工事が開始されたが、シエナ市の財政上の逼迫(ひっぱく)や1348年のペストの流行で、工事は中断を余儀なくされた。新たに建設された部分を取り壊し、在来どおりの計画に戻って、1376年にジョバンニ・ディ・チェッコが正面上部の装飾に着手し、82年にはアプスが完成した。度重なる設計変更のため、外観構成とプランに秩序シンメトリーを欠くうらみはあるが、美観は損なわれていない。壁面は白と黒の大理石による横縞(よこじま)模様で装われ、この中世都市にふさわしい瀟洒(しょうしゃ)なたたずまいをみせている。床面に施された旧約物語を題材にした多色大理石のはめ込み細工は、豪奢で精巧な技法を示しており、ニコラ・ピサーノ一門による説教壇、ドナテッロの手になる『洗礼者聖ヨハネ像』はともに彫刻史上の逸品である。アプスに隣接する洗礼堂には、ギベルティ、ドナテッロ、ヤコポ・デッラ・クエルチアの浮彫りで装われた洗礼盤が設置されている。

[濱谷勝也]


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改訂新版 世界大百科事典 「シエナ大聖堂」の意味・わかりやすい解説

シエナ大聖堂 (シエナだいせいどう)
Duomo, Siena

イタリアのシエナにあるゴシック様式の大聖堂。正称はサンタ・マリアSanta Maria。12世紀末に起工し,14世紀末にかけて建設。全体として3廊式ラテン十字形平面を示すが,交差部がやや不整形の六角形平面をなし,各柱上方のトロンプで荷重を受けて交差部のドームと採光塔を頂くのが特異である。内部の柱・壁は色大理石で水平の縞模様をなし,床も多色大理石のモザイクで覆われる。ジョバンニ・ピサーノ設計の西正面(下半分のみ原案どおり)は,飾り破風や小尖塔を伴ったばら窓と3扉口によりフランス式構成を示すが,彫刻やモザイク画の豊かな装飾は全体としてなおイタリア的な平板性にとどまっている。南袖廊と側廊に接して正方形平面の鐘塔が立ち,やはり色大理石の縞模様が外壁面を飾る。堂外南部分には,実現を見ずに終わったが,現身廊を袖廊とする新大聖堂への改築を試みた14世紀の工事の一部が残る。堂内には,ニコラ・ピサーノの彫刻を持つ説教壇等がある。
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百科事典マイペディア 「シエナ大聖堂」の意味・わかりやすい解説

シエナ大聖堂【シエナだいせいどう】

イタリアのシエナの大聖堂で,イタリア・ゴシック建築の代表作の一つ。Duomo,Siena。12世世紀末に着工し,内陣は1317年に完成。内部の柱と壁は白と黒の大理石が交互に重ねられ,水平線が強調されている。G.ピサーノの設計により1380年に完成したファサードは白大理石を基調に赤,黒の大理石を用い,精緻な彫刻で飾られた壮麗なもの。
→関連項目シエナドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャピサーノピントゥリッキョ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シエナ大聖堂」の意味・わかりやすい解説

シエナ大聖堂
シエナだいせいどう
Duomo di Siena

イタリア中部の古都シエナの大聖堂。 1380年頃に完成し,イタリア初期ゴシックを代表する。聖堂の内外は,白と黒の大理石による水平縞文様の化粧張りが施され,1284~99年の G.ピサーノのデザインによる三角形の破風をもつファサードも白,黒,ピンクの大理石で化粧張りされている。内部の床はベッカフーミらによって制作されたモザイクによって飾られ,他に例をみない特色を示す。そのほか,N.ピサーノによる説教壇,ベッカフーミ,ピントリッキオのフレスコ,ギベルティ,ドナテロ,ベルニーニの彫刻などが聖堂内を飾っている。北方ゴシックの無限定な空間を求める意識ではなくて,あらゆることに関して明確な形を求めるイタリア特有の造形意識がうかがわれる。

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世界大百科事典(旧版)内のシエナ大聖堂の言及

【ゴシック美術】より

…西ヨーロッパ中世後半におこなわれた美術。ロマネスク美術につぎ,その発展の結果として生まれ,12世紀中期から準備期に入り,13世紀にフランス,イギリスにおいて明確な様式として成立し,さらに西ヨーロッパ全土に波及し,つづく2世紀間に発展・変化して,15世紀初めからイタリアで形成されるルネサンス美術が代表する近世美術にとって代わられるまで存続した。ゴシックGothicの名称は,バザーリらルネサンスのイタリア人が中世建築を粗野な蛮族ゴート人Gothのもたらしたものとして非難したことに由来するが,19世紀以来,西ヨーロッパ中世美術の一様式をさす美術史上の用語として適用されるにいたった。…

【床】より

…切石を何種類もの石を用いて構成し,その目地のパターンを複雑にすると,この方法はモザイクに近づいていく。中世の教会堂の床面の美しい例としては,イタリアのシエナ大聖堂の作例(12世紀)が有名である。屋外の広場ではあるが,ミケランジェロ設計ローマのカンピドリオの広場の切石によるパターンも,西洋の床のデザインの伝統を示す作例として興味深い。…

※「シエナ大聖堂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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