日本大百科全書(ニッポニカ) 「シェフィールド」の意味・わかりやすい解説
シェフィールド
しぇふぃーるど
Sheffield
イギリス、イングランド中部、サウス・ヨークシャー大都市県の工業都市。ペニン山脈東麓(とうろく)に位置する。人口51万3234(2001)。マンチェスターの東約55キロメートルにあり、ドン川(ハンバー川の支流)がシーフ川と合流する地点に位置する。水運の便に恵まれ、7世紀ごろから集落が発達、商業中心地となった。早くから鉄の製錬が行われたが、14世紀以降、刃物製造が盛んとなり、17世紀以降はイギリスの刃物生産をほぼ独占している。当初鋼材は輸入したが、産業革命後に近くの石炭と鉄鉱石を利用して鉄鋼生産が始まり、イングランドの代表的な鉄鋼業都市の一つとなった。しかし、その後各地で鉄鋼業がおこり、19世紀なかばには近くの鉄鉱石が枯渇(こかつ)して鉄鉱石の輸入が必要となったため、刃物を中心とする高級鋼の加工生産に重点を移した。この間、19世紀初期に数万にすぎなかった人口が、1901年には約41万に急増した。軍艦、戦車、銃砲、レール、エンジンなどの鋼材のほか、鉄、真鍮(しんちゅう)、銀、光学器械、紡績などの工場群がドン川沿いに建ち並び、郊外に広がる起伏に富んだ美しい自然の風景と好対照をみせている。市内にはラスキン博物館、マッピン美術館をはじめとして、各種博物館、美術館、図書館、劇場、コンサート・ホールなどの文化施設が整備されており、教会、病院も多い。1905年創立のシェフィールド大学は、医学部、工学部を中心とするイギリスの代表的な大学の一つで、1962年に日本研究センターが新たに設けられている。第二次世界大戦中にはドイツ空軍の爆撃を受け、中心市街地と周辺郊外地は大きな被害を受けた。
[井内 昇]