改訂新版 世界大百科事典 「シオガマギク」の意味・わかりやすい解説
シオガマギク (塩竈菊)
Pedicularis resupinata L.var.oppositifolia Miq.
山地の日当りのよい草原に生えるゴマノハグサ科の半寄生の多年草。地下で多くの茎に分かれて株立ちとなり,高さ25~60cm。葉は下部のものは対生し,上部で互生する。葉身は狭卵形,基部は丸みのある切形(せつけい),長さ4~9cm,幅1~2cm,縁に重鋸歯がある。8~9月,枝先に集まった苞葉のわきごとに,紅紫色の花をつける。萼は筒形で腹面が深く裂ける。唇形花冠は長さ約2cm,下唇が斜めに広がって先が3浅裂し,上唇は鎌形に曲がって先がくちばし状にとがる。蒴果(さくか)は三角状卵形でとがり,長さ約1cm。北海道中部・南部,本州,四国,九州,朝鮮,中国東北部に分布する。
基本変種のシベリアシオガマP.resupinata L.は北海道北部からサハリン,シベリアにかけて分布し,葉はすべて互生し,花序が伸びる。近縁種エゾシオガマP.yezoensis Maxim.は花が黄白色で葉の基部は明りょうな切形で,本州中部以北,北海道の高山の草地に生える。
シオガマギク属Pedicularis(英名lousewort)は,北半球の温帯から寒帯にかけて500種ほど知られる。日本には15種あり,6系統の群が認められる。花冠の先が細くとがる群にセリバシオガマ節,シオガマギク節,ヨツバシオガマ節がある。セリバシオガマ節は葉が上部まで対生し,本州中部の亜高山帯に生えるセリバシオガマP.keiskei Fr.et Sav.がある。シオガマギク節は葉が互生ときに対生し,花冠の下唇は斜めに広がる。ヨツバシオガマ節は葉が4枚輪生し,高山の草地に生えるヨツバシオガマP.chamissonis Stev.がある。花冠の先が丸いものにハンカイシオガマ節,タカネシオガマ節,ミヤマシオガマ節がある。ハンカイシオガマ節は大型の多年草で葉は対生し,太平洋側にハンカイシオガマP.gloriosa Biss.et Moore,日本海側にオニシオガマP.nipponica Makinoがある。タカネシオガマ節は一年草で,葉は4枚輪生し,タカネシオガマP.verticillata L.が含まれる。ミヤマシオガマ節は葉が互生する多年草で,花冠の先端にとげ状突起があり,ミヤマシオガマP.apodochila Maxim.が本州中部・北部の高山に生える。
シオガマギク属は中国大陸からヒマラヤ,中央アジアに多くの種が分化しており,中国では薬用にされる種もいくつかある。また若葉や根茎をよく煮て水洗いし食用にされることもある。花がきれいな種が多く,寄生性には強弱があるので,寄生性の強くない種は園芸植物として利用される。
執筆者:山崎 敬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報