日本大百科全書(ニッポニカ) 「シノン」の意味・わかりやすい解説
シノン
しのん
Sinōn
ギリシア神話の英雄オデュッセウスの血縁にあたる人物。トロヤ攻略の際のギリシア軍側のスパイ。オデュッセウス(またはエペイオス)の発案により巨大な木馬を作製したギリシア軍は、その中に兵士を詰め、アテネ女神への捧(ささ)げ物と彫り込んでこれを放置した。そしてシノン1人を残し、トロヤからの撤退を偽装した。わざとトロヤ側に捕まったシノンは、プリアモス王の前で、木馬を城内に引き入れれば敗れることはないと偽り、それを信じたトロヤ側はカッサンドラとラオコーンが凶と預言していたにもかかわらず木馬を城内に引き入れてしまった。その夜、闇(やみ)に乗じて木馬の腹を開けたシノンは、オデュッセウスをはじめ中の兵士を導き出すとともにアキレウスの墓の上でのろしをあげ、偽装撤退していた味方の軍を呼び寄せて一気にトロヤの城市を攻略せしめた。
[丹下和彦]