シマガツオ(読み)しまがつお(その他表記)Pacific pomfret

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シマガツオ」の意味・わかりやすい解説

シマガツオ
しまがつお / 縞鰹
Pacific pomfret
[学] Brama japonica

硬骨魚綱スズキ目シマガツオ科に属する海水魚。俗にエチオピアともいう。北海道以南の日本海と太平洋沖、朝鮮半島、東シナ海、小笠原(おがさわら)諸島、九州・パラオ海嶺(かいれい)、台湾など北太平洋と東太平洋の海域分布する。体は卵円形で、側扁(そくへん)する。体高は体長の半分か、それよりやや低い。尾柄(びへい)は著しく細い。頭部は強く側扁し、背縁は丸く、両眼間隔域は著しく突出する。吻(ふん)はほとんど垂直。口は斜めで、その後端は目の後縁下に達する。上下両顎(りょうがく)には鋭い円錐歯(えんすいし)があり、上顎の前方では3~4列、側方では2列で、外列歯は内列歯より小さい。下顎歯は前方では5列で、後方に向かって列数が少なくなる。体の鱗(うろこ)は円鱗(えんりん)で、吻部と両眼間隔域には鱗がない。背びれ、臀(しり)びれ、および尾びれは鱗をかぶる。縦列鱗数は65~75枚。背びれは32~36本、臀びれは27~30本で、すべて軟条からなる。胸びれは長く、臀びれ軟条部の中ほどまで伸びる。腹びれは胸びれ基底の直下にあり、左右のひれが接近する。体は、生時には背部では黒色で、側線より下部では銀白色であるが、死後すぐに黒くなる。外洋の水深400メートルまでの中層域にすみ、夜間には表層近くに浮上する。冬季には亜熱帯海域に南下し、夏季には亜寒帯海域に北上する。おもにイカ類、魚類、オキアミ類などを食べる。全長60センチメートルに達する。おもに流し網、巻網、釣り、底引網などで漁獲される。マグロ延縄(はえなわ)漁の副産物としてでもとれるが、相模(さがみ)湾では底釣りでまとまってとれる。神奈川県三崎(みさき)付近では遊漁の対象として人気があり、5~10トン級の底釣り漁船を利用して、東京湾口から相模湾の海域で釣りが行われている。刺身、塩焼き、みそ漬け、粕(かす)漬けなどにする。肉は白身でやや美味。鮮度の悪いものは練り製品の原料とする。

 左右の腹びれが接近していることでマルバラシマガツオB. orciniとヒメシマガツオB. dussumieriに似るが、シマガツオは縦列鱗数が多くて65枚以上あることで他の2種と区別できる。

[鈴木 清・尼岡邦夫 2023年11月17日]

釣り

相模湾や東京湾口で釣り人がねらうようになったのは1973年(昭和48)からで、水深150~300メートルの宙層を釣る。釣りは一年中行われているが、春から夏に盛んで、引きが強いので釣り人に喜ばれる。竿(さお)はじょうぶな胴付き竿。道糸は伸びのない色分け10号。ハリス10号の枝バリ3本か4本。オモリ100号。魚を誘う水中ライトを仕掛け上部につける。餌(えさ)はサバの身餌。150メートルくらいまで一気に仕掛けを沈め、そのあと泳層を探りながらゆっくり300メートルくらいまでもっていく。強烈な引きなので魚を遊ばせずに一気にリールを巻くようにする。

[松田年雄]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「シマガツオ」の意味・わかりやすい解説

シマガツオ (縞鰹)
pomfret
Brama japonica

スズキ目シマガツオ科の海産魚。別名エチオピア。これは漁獲後に体色が黒変することと,1930年代に日本の太平洋岸で多獲されたころ,エチオピアとの関係が親密になったためといわれる。外洋性で,ほとんど全世界の熱帯から寒帯にかけて分布している。日本では本州太平洋岸中部以南に多い。東京でクロマナガツオ,テツビン,ピヤ,ビヤ,神奈川県三崎でヒラブタ,北海道釧路でクロンボと呼ばれる。体は平たい円盤状。全長60cmに達する。体色は生きているときには銀白色であるが,死ぬと黒色または黒褐色になる。熱帯域では水深数百mにすむが,水温の低いところではより浅いところにすみ,寒帯では表層近くにいる。胸びれを用いて高速で泳ぐことができる。肉食性で,動物プランクトン,小型の魚類,イカ類などを食べている。マグロはえなわ漁業,サケ・マス流し網漁業で混獲されるほか,釣りでかかることもある。肉は白く,脂肪が多い。新鮮なものはフライなどで美味であるが,練製品の材料にされることが多い。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「シマガツオ」の意味・わかりやすい解説

シマガツオ

シマガツオ科の魚。別名エチオピア。これは漁獲後に体色が銀白色から黒色に変わることや,日本で多獲されるようになった1930年代にエチオピアとの関係が深まったことなどに由来するといわれる。地方名クロマナガツオ,ヒラブタなど。全長60cmに達し,ほぼ全世界の海洋に分布。体は平たい円盤状で,胸びれを用いて高速で泳ぐ。肉は白く脂肪が多い。新鮮なものはフライなどにして美味だが,主として練製品の材料となる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

栄養・生化学辞典 「シマガツオ」の解説

シマガツオ

 [Brama japonica].スズキ目シマガツオ科の海産魚.体長40〜60cmになる.食用魚.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android