改訂新版 世界大百科事典 「シャンフルーリ」の意味・わかりやすい解説
シャンフルーリ
Champfleury
生没年:1821-89
フランスの小説家,美術批評家。本名ジュール・ユッソンJules Husson。北フランスのラン生れ。パリで書店に勤め,1844年より文芸雑誌《ラルティストL'artiste》に批評を書く。46年ころからボードレール,クールベ,ドーミエらと次々に知り合い,互いの影響の下に写実主義の思想を形成し,57年に宣言ともいうべき序文をつけた《写実主義》と題する論文集を発表。彼の主張は,芸術においては〈美〉よりも〈真実〉が優先し,それは理想化されてはならず,また現実社会に密着しなければならないというものだった。48年から57年ころまでクールベとごく親しい関係にあり,クールベの〈醜い〉と言われた人物を,真実を描いているという理由で擁護した。60年におこなったル・ナン兄弟の再評価も同じ視点からのものである。このころから,現実の一断片以上のものを描こうとするクールベを理解できなくなり,両者は離れていった。著作は,美術史の分野では《カリカチュアの歴史》(1866),文学作品では版画家ブレズダンをモデルにしたといわれる《シャン・カイユーChien-Caillou》(1847),《マリエット嬢の情事》(1851)などがある。
執筆者:馬渕 明子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報