改訂新版 世界大百科事典 「ショウジョウバカマ」の意味・わかりやすい解説
ショウジョウバカマ
Heloniopsis orientalis(Thunb.)C.Tanaka
春先に紫色のかれんな花をつけるユリ科の多年草。山地の明るい湿地に多い。群生する性質があって,よく人目を引く。花茎は高さ10~30cm。花後伸長し,果実期には50cmほどになる。これは,種子散布を効率よく行うための適応と考えられる。種子は小さく長さ5mm程度で,両端にとがった翼があり,茎がゆれると風にのってよく飛ぶ。花は花茎の先端に集まってつき,数個から多いものでは15個くらい咲く。花被片は6枚で紅紫色,花後緑化する。おしべは6本あり,葯は濃紫色,花糸は淡紫色に色づく。子房は3室で胚珠は多数ある。沖縄を除く日本全土および朝鮮に分布する。四国と本州の一部にシロバナショウジョウバカマvar.flavida(Nakai)Ohwi,九州にツクシショウジョウバカマvar.breviscapa(Maxim.)Ohwiが分化している。山草愛好家の間でしばしば栽培される。葉の先から不定芽を出す性質があり,発生生理学研究の実験植物として利用されている。
ショウジョウバカマ属Heloniopsisは東アジアに固有で,中国産イプシランドラ属Ypsilandraと北アメリカ東部産ヘロニアス属Heloniasに近縁である。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報