デジタル大辞泉
「ロゼット」の意味・読み・例文・類語
ロゼット(rosette)
《「ローゼット」とも》
1 根出葉が地面に放射状に広がり、バラの花の形を呈するもの。多年草・越年草の冬越しの状態。タンポポ・ヒメジョオン・ナズナなどの葉にみられる。
2 リボン・布などで作ったバラの花形の飾り。記章・胸飾りなどにする。
3 建築で、バラの花形の装飾。
4 つり電灯などのコードが電気配線に接続する部分に用いる装飾器具。
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ロゼット
- 〘 名詞 〙 ( [英語] rosette )
- ① 植物の根生葉が地面に水平放射状に出て、全体が円座形をなしたもの。節間はほとんど伸長せず、主に節数が増加して、わずかずつ丈が伸びるため根から葉が出ているように見える。タンポポ、オオバコなどに見られる。越年草や二年草ではこの形で越冬するものが多い。
- ② バラ型の飾り。また、バラの花型に結んだリボン。
- [初出の実例]「これはロゼット型といふ古い切り方ですな」(出典:魔都(1937‐38)〈久生十蘭〉一四)
- ③ 建築で、②の文様をもつ装飾器具。シャンデリアの吊り元の部分などに用いる。
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ロゼット
rosette
草本の茎が基部で節間が伸びず,相接して葉が出ると,タンポポのように地表付近で葉を多数叢出するようにみえる。このような葉を根出葉(根生葉)といい,そのような草本の生育型を,バラの花冠に似た形状をしているところからロゼットという。ふつうは,根出葉を出す短い茎から,花茎が長く伸び出し,花茎には根出葉と異なった形態の葉(茎葉という)をつけるが,葉を全然つけない場合もあり,タンポポのように花梗に頭状花をつけるだけという姿のものもある。越年性の長日草では,冬の間は根出葉だけで過ごし,春になると温度や日長などの環境の変化に応じて,それまで伸長しなかった茎の頂端に花芽が誘導されるいわゆる抽だいboltingによって急速に伸長するようになる。頂芽が花芽になると節の分化が乏しくなるか,まったくなくなってしまい,ロゼットの形状はなくなってしまう。
なお一般に生物体における類似の形状の構造をロゼットということがあり,クシクラゲ類の胃水管壁にある繊毛環などがその例である。
執筆者:岩槻 邦男
ロゼット
rosette
花形装飾を意味するフランス語および英語。開花した花を上から見た形を図式化した装飾ないし模様で,中心から放射状に広がる花弁状の単位を円形に並べたもの。外縁は単円または同心円で囲まれる場合が多い。抽象化された花弁が多角形として描かれることもあり,重なりあった花弁を図化した複雑な例もある。同一方向に湾曲した花弁が中心から外周へ旋回しつつ広がる螺旋(らせん)形ロゼット,花形を中央で二つに分けてその間に他のモティーフを挿入した分離形ロゼットなどの変形がある。建築装飾のうち,とくにバラの花をモティーフにしたロゼットはロザースrosaceの名で区別される。
執筆者:日高 健一郎
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ロゼット
rosette
(1) 植物形態学上の用語。茎の節間部が詰ってほとんど同じ高さから円形の敷物状に葉が叢生して,バラの花のようになった形態をいう。これは茎の生長時に節数はふえながら節間の伸長が著しく抑制された生育型である。二年生草本植物 (たとえばダイコン) ,多年生草本植物 (たとえばタンポポ) などの越年の茎にみられ,葉が根のすぐ上から出て地面をおおっているようにみえる。これらの植物の多くは,温度や日照時間の変化によって節間部が伸びれば普通の形態の茎となる。 (2) 繊毛環 (せんもうかん) ともいい,クシクラゲの胃水管系の壁にみられる細胞の集りをさす。原腎管の炎細胞に似た構造で,排出器官であるという説と,胃水管系から体内に水や栄養を送る器官であるという説とがある。
ロゼット
rosette
花形の装飾モチーフ。非常に古い時代から頻繁に建築,彫刻,工芸品に用いられた。一般に単円または2重,3重の円に囲まれた丸い楕円形,多角形の中に,開花した花を抽象図式化した文様。エジプトのものは蓮華 (れんげ) を主題にしたものと思われるが,一般にはばら形文様で,中心から円周に向って旋回するようなモチーフもあり,これを螺旋ロゼットと呼んでいる。
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ロゼット
ろぜっと
rosette
短い茎に、扁平(へんぺい)な多数の葉が地面の表面に接して放射状についている状態、あるいはそのような植物体をロゼットという。ロゼットの状態で越冬する植物はロゼット植物とよばれ、タンポポ、ハルジョオン、マツヨイグサなどがある。ロゼット植物には、タンポポのように花序を支える茎だけが春に伸びるものと、ハルジョオンのように春に伸長して花をつける茎の上に、ロゼット状の葉とは別に普通葉をつけるものとがある。
[原 襄]
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世界大百科事典(旧版)内のロゼットの言及
【荒原】より
…両者ともに乾燥度が高くなると,ごくまれに降る雨の後の短い期間に発芽から結実までを終える短命草本ephemeral plantが出現する。寒帯荒原や高山荒原では岩礫(がんれき)地が多く,地衣類や蘚苔(せんたい)類以外ではロゼット植物rosette plantや半球形の団塊植物cushion plantなどの地表性の岩隙植物が多い。【藤田 昇】。…
【ロゼット】より
…草本の茎が基部で節間が伸びず,相接して葉が出ると,タンポポのように地表付近で葉を多数叢出するようにみえる。このような葉を根出葉(根生葉)といい,そのような草本の生育型を,バラの花冠に似た形状をしているところからロゼットという。ふつうは,根出葉を出す短い茎から,花茎が長く伸び出し,花茎には根出葉と異なった形態の葉(茎葉という)をつけるが,葉を全然つけない場合もあり,タンポポのように花梗に頭状花をつけるだけという姿のものもある。…
【文様】より
…邦訳名《美術様式論》)である。リーグルは,ロータス花文を正面形([ロゼット]),側面形,半側面形に分類し,さらに側面,半側面形では渦巻形の萼(がく),地間充塡(じゆうてん)の栓形(せんけい),葉状扇形花弁などの抽象的形式に分析して,その組合せによる花形の展開を述べている。しかしこの場合,〈萼〉〈花弁〉といっても,これはあくまで文様の構成を解説する形式語であることに注意しなければならない。…
【蓮華文】より
…古代エジプトの[スイレン]を起源とするロータス文様が,古くメソポタミア,ギリシア,イランなどで愛用された。蓮華文には正面型と側面型とがあり,正面型は満開の花を真上から見た形で,花弁が放射状にならんで円をつくり,[ロゼット]とも呼ばれる。側面型は蓮弁文ともいい,何枚かの花弁を扇状に開かせて全体として釣鐘型をなし,[パルメット]文様の原型とされる。…
※「ロゼット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」