改訂新版 世界大百科事典 「しらくも」の意味・わかりやすい解説
しらくも
皮膚真菌症の一つ。医学的には頭部浅在性白癬(はくせん)tinea capitisという。真菌の一種である皮膚糸状菌が被髪頭部に感染して発症する皮膚疾患。日本では第2次大戦直後の衛生状態の悪い時代には学童の間にまんえんしたが,最近では激減し,まれな疾患となっている。初期では菌が表層の角質層に寄生するが,しだいに毛髪をも侵す。主として学童期の小児の頭部にほぼ円形で境界が明確な局面を生じ,多発することが多い。その部分には細かい粃糠(ひこう)状の落屑(らくせつ)(ふけが落ちること)があり,脱毛を伴う。湿潤したり,発赤をみることは比較的少なく,鱗屑のため病変部が白く見える。近年では,しらくもの一型で,頭部の毛髪に菌が感染して短く切断されるために,残った毛が黒い小点として見える黒点輪癬black dot ringwormといわれる病型が漸増している。治療にあたり洗髪や髪を短く切るなどして,局所の清潔と通気性をよくすることが大切である。抗白癬剤を含有した軟膏,液剤を外用する。グリセオフルビン,ケトコナゾールなど抗白癬剤の内服療法が必要なこともある。
執筆者:原田 敬之
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