日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジェネット」の意味・わかりやすい解説
ジェネット
じぇねっと
genet
広義には哺乳(ほにゅう)綱食肉目ジャコウネコ科ジェネット属に含まれる動物の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。狭義のジェネットであるヨーロッパジェネットGenetta genettaはヨーロッパ南西部、アラビア半島、地中海東部からアフリカ南部まで分布する。ヨーロッパ南西部に分布するものは人間によって移入されたものといわれる。頭胴長47~58センチメートル、尾長41~48センチメートル。斑紋(はんもん)が美しい小形のジャコウネコで、体が細長く、長い頭、とがった吻(ふん)および卵形の耳介をもつ。前後肢は比較的短い。つめはネコのように鞘(さや)に引っ込めることができ、歩き方は指行性である。体毛は短く、滑らかで、黄褐色または灰褐色の地色に黒斑があり、背の正中線上に逆立てることができるたてがみ状の黒色毛がある。尾は先が細く、黒白の輪がある。臭腺(しゅうせん)は明らかであるが、ジャコウネコほど発達しない。夜行性で、日中は岩の割れ目やほかの動物が掘った穴に単独または1対ですむ。小獣類、鳥類、昆虫などを捕食し、木登りがうまい。多くは獲物を地上でとらえる。特定の繁殖期はなく、年じゅう繁殖可能で1産2~3子を樹洞、地中の穴、高い草むらなどに産む。寿命は約15年であるが、飼育下で35年の記録がある。
ジェネット属には11種があり、ヨーロッパジェネットのほかはすべてアフリカに分布する。アフリカ南部にはヨーロッパジェネットによく似るが地色が黄色に富み、斑紋が大きいトラフジェネットG. tigrinaがいる。
[吉行瑞子]