ジャンクリストフ(その他表記)Jean-Christophe

デジタル大辞泉 「ジャンクリストフ」の意味・読み・例文・類語

ジャン‐クリストフ(Jean-Christophe)

ロマン=ロラン長編小説。10巻。1904~1912年刊。ベートーベンモデルにしたといわれる作曲家ジャンクリストフ主人公に、その精神的成長を描く。

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精選版 日本国語大辞典 「ジャンクリストフ」の意味・読み・例文・類語

ジャン‐クリストフ

  1. ( 原題[フランス語] Jean Christophe ) 長編小説ロマン=ロラン作。全一〇巻。一九〇四~一二年発表。天才音楽家ジャン=クリストフの苦難に満ちた生涯を、当時の西欧社会を背景に展開した大河小説。一青年の自己形成の書であると共に、社会・時代に対する文明批評の書でもある。

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改訂新版 世界大百科事典 「ジャンクリストフ」の意味・わかりやすい解説

ジャン・クリストフ
Jean-Christophe

フランスの作家R.ロランの長編小説。全10巻。1904-12年刊。ベートーベンおよびロラン自身をモデルとする天才的作曲家ジャン・クリストフ・クラフトの生涯が物語の経糸(たていと)になっている。ドイツ,ラインラント地方に生まれたクリストフは貧困とたたかいつつ音楽家として自立する(〈曙〉〈朝〉〈青年〉)。ドイツの地方都市の因習に反逆し,フランスに去る(〈反抗〉)。しかしパリの文壇,音楽界,政界の腐敗と堕落にも失望する(〈広場の市〉)。純真な青年オリビエと友情で結ばれる。またその姉の薄幸の運命も知る(〈アントアネット〉〈家の中〉)。オリビエは家庭をもつが挫折し(〈女友だち〉),メーデー暴動に加わり死亡。スイスに逃れたクリストフはさらに大きな試練を乗り越えて,ようやく魂の平安と音楽的霊感に恵まれる(〈燃えたつ茂み〉〈新しい日〉)。《ジャン・クリストフ》は自由と正義と愛のひたむきな追求をテーマとする抒情的な交響曲であると同時に,19世紀末から20世紀初頭にかけてのフランスおよびヨーロッパの知的・精神的全体像を描き出そうとした全体小説の,フランス文学史上最初の試みである。日本では1913-14年に抄訳,部分訳のかたちで紹介され,17-18年(後藤末雄)と20年(豊島与志雄)に,それぞれ完訳が刊行されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャンクリストフ」の意味・わかりやすい解説

ジャン・クリストフ
じゃんくりすとふ
Jean-Christophe

フランスの作家ロマン・ロランの長編小説。シャルル・ペギーの主宰する『半月手帖(はんげつてちょう)』誌に発表(1904~12)された、10巻からなる大河小説。音楽家の血筋を引く主人公のジャン・クリストフはドイツ、ライン河畔の小都市生まれ。クリストフにはベートーベンの印象が濃いといわれる。音楽と自然への目覚め、貧困と屈辱による挫折(ざせつ)、友情と初恋の経験を通し、彼は叔父ゴットフリートに支えられ、伝統的偶像に反対し、崇高を目ざす青年に成長してゆく。祖国の偏狭な空気に窒息しかけた彼は、傷害事件を契機にパリに向かうが、自由であるはずの大都会に巣くう知識人の陳腐で卑劣な言動と衝突し、理想を貫くための闘争が続く。このくだりは一種の文明批評をなす。同一の使命感に燃えるオリビエとの出会いと2人の美しい共同生活。しかし、デモに参加したオリビエは死に、彼はその混乱中に起こした殺害事件のためスイスに逃れる。強靭(きょうじん)で健康な考えをもつアンナとの愛と別れ、山中で聞いた神の声、青春時代に知ったイタリア女性との再会。彼女の娘とオリビエの息子との結婚には、ヨーロッパ共同体への著者の夢が感じ取れる。いまや大作曲家となった彼を待つのは静かな死である。「闘い、悩み、勝つであろう」魂に捧(ささ)げられたこの作品は、思想や文体上の欠陥をもつとはいえ、19世紀末から20世紀初頭にかけて激動する世代を誠実に生き抜いた人間の精神史であり、霊的息吹に満ちた一大叙事詩である。

[中條 忍]

『『ジャン・クリストフ』(豊島与志雄訳・全8冊・岩波文庫/新庄嘉章訳・全4冊・新潮文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジャンクリストフ」の意味・わかりやすい解説

ジャン=クリストフ
Jean-Christophe

フランスの作家ロマン・ロランの大河小説。 1904~12年,雑誌『半月手帖』に発表。全 10巻に及ぶ大作で,世界的な反響を呼んだ。ドイツ生れの天才的音楽家ジャン=クリストフの一生を通して,真の芸術は生命から生れ,夢や幻想を糧とするのではなく,芸術家が魂の平静に達するために乗越えねばならない苦痛や失敗を糧とするものであると主張した教養小説。同時に普仏戦争から第1次世界大戦直前までのヨーロッパ諸国の芸術,文明,道徳を痛烈に批判した社会小説でもある。ロランはこの作品によって,15年にノーベル文学賞を受けた。

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百科事典マイペディア 「ジャンクリストフ」の意味・わかりやすい解説

ジャン・クリストフ

ロランの小説。全10巻。1904年―1912年刊。音楽家クリストフが人生の苦悩と歓喜を経験しながら,魂の成長をとげる過程を描き,ヨーロッパ精神の統一という作者の理念を示したもの。ロランの熱愛したベートーベンがモデルといわれる。シャルル・ペギー主幹の《半月手帖》誌に掲載されたのち単行本として出版された。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ジャンクリストフ」の解説

ジャン=クリストフ
Jean Christophe

フランスの作家ロマン=ロランの長編小説
1904〜1912年作。ドイツの架空の音楽家クリストフの伝記の形をとり,誠実で熱情的な主人公が,偽善や不正,困難や障害と闘い,しだいに人生を学んでゆく過程を描く。ベートーヴェンがモデルといわれる。この作品により,ロマン=ロランは1915年度ノーベル文学賞を受賞。

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世界大百科事典(旧版)内のジャンクリストフの言及

【豊島与志雄】より

…その小説は数が多く,《人間繁栄》(1924),《道化役》(1935),《白蛾》(1946),《山吹の花》(1954)などに収録されている。またユゴーの《レ・ミゼラブル》(1918‐19),ロマン・ロランの《ジャン・クリストフ》(1920)などの訳業があり,名訳としての誉れが高い。さらに《夢の卵》(1927),《エミリアンの旅》(1933)など質の高い童話を多く残した。…

※「ジャンクリストフ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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