小説家,翻訳家,児童文学作家。福岡県生れ。東大仏文科卒業。在学中の1914年,山本有三,久米正雄,芥川竜之介らと第3次《新思潮》を創刊。同年《帝国文学》に発表した《彼と彼の叔父》が中村星湖に認められ,文壇に登場した。17年,第1創作集《生あらば》刊。初期作品は,B.K.ザイツェフやM.メーテルリンクの影響が強く,芥川によって〈秋よりも爽かな情味〉と評された。その小説は数が多く,《人間繁栄》(1924),《道化役》(1935),《白蛾》(1946),《山吹の花》(1954)などに収録されている。またユゴーの《レ・ミゼラブル》(1918-19),ロマン・ロランの《ジャン・クリストフ》(1920)などの訳業があり,名訳としての誉れが高い。さらに《夢の卵》(1927),《エミリアンの旅》(1933)など質の高い童話を多く残した。東大講師をはじめ,法政・明治両大学の教授を歴任,晩年は日本ペンクラブ幹事長,日中友好協会副会長として,社会的発言も活発であった。
執筆者:関口 安義
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大正・昭和期の小説家,翻訳家
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小説家、翻訳家、児童文学者。明治23年11月27日、福岡県朝倉(あさくら)郡福田村(現朝倉市)に生まれる。東京帝国大学仏文科卒業。在学中の1914年(大正3)第三次『新思潮』創刊号に『湖水と彼等(かれら)』を発表。続いて同年『帝国文学』に発表した『彼と彼の叔父』が中村星湖(せいこ)の目に留まり、文壇に登場した。初期の作品には、ロシア近代小説のザイツェフを思わせるような清澄な気分が漂っている。以後いくつかの大学で仏文学を講じながら数多くの小説、童話を発表した。代表的小説集に『生あらば』『野ざらし』『道化役』『白蛾(はくが)』、童話集に『夢の卵』『エミリアンの旅』などがある。また、ユゴーの『レ・ミゼラブル』、ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』の翻訳があり、名訳としての誉れが高い。その他多くの随筆・評論、それに若干の戯曲もある。豊島小説の前衛的作風は一般には理解されなかったものの、一部具眼の士からは高く評価されている。昭和30年6月18日没。
[関口安義]
『『豊島与志雄著作集』全6巻(1965~67・未来社)』▽『関口安義著『豊島与志雄研究』(1979・笠間書院)』
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…その主流はロマンティックな未明童話を頂点とする物語性のゆたかなメルヘンで,子どもの現実生活をリアルに描いた作品は少なかった。代表的な作家には,秋田雨雀,芥川竜之介,有島武郎,宇野浩二,佐藤春夫,豊島与志雄たちがいる。 大正期には児童中心主義の児童観に応ずる童心文学の主張が支配的で,それが典型的に現れたのは北原白秋,西条八十,野口雨情に代表される童謡においてであるが,この近代的詩形が日本の伝承童謡の復興を詩の精神としたことは注目すべきである。…
※「豊島与志雄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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