ジョデル(読み)じょでる(英語表記)Étienne Jodelle

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジョデル」の意味・わかりやすい解説

ジョデル
じょでる
Étienne Jodelle
(1532―1573)

フランスの劇詩人。パリ生まれ。20歳の学生のとき、国王アンリ2世の前で自作の悲劇『囚(とら)われクレオパトラCléopâtre captive喜劇『ウージェーヌ』Eugène(ともに1553)を自ら出演して上演、その新味によって文学的事件として絶賛された。とくに前者冗長で筋の運びも緩慢ではあるが、高貴な主題、十二音綴(じゅうにおんてつ)詩句(アレクサンドランalexandrinの使用、叙情性、五幕構成、三統一の規則(三一致法則)など、後の古典悲劇の萌芽(ほうが)を含んでいる点で注目される。詩人集団プレイアード詩派に参加した。

伊藤 洋]

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改訂新版 世界大百科事典 「ジョデル」の意味・わかりやすい解説

ジョデル
Étienne Jodell
生没年:1532-73

フランスの詩人,劇作家。人文学者ミュレの教えるボンクール学寮に学ぶ。1552年に喜劇《ウジェーヌあるいは奇遇》を書き,中世の笑劇と隔絶して,古代喜劇を模範とする人文主義喜劇を創始するが,いまだ洗練された作品ではない。しかし53年にアンリ2世の前で上演した《囚われのクレオパトラ》は,ロンサールによりセネカの悲劇を継ぐ人文主義悲劇として高く評価され,プレイヤードの一員に加えられた。ギリシアやラテンの古典を多く援用し,劇行為は単純で,きわめて詠嘆的な作品である。当時流行のウェルギリウスの《アエネーイス》の一節を劇化した第2作《身を献げるディド》も,古典を学ぶ学生の手で学寮で試演されたが,刊行は没後。ほかに劇作を含まぬ詩集《作品集》(1558)がある。60年に王寵を失い,貧窮のうちに死んだが,アリストテレスの演劇理論にもとづく人文主義演劇の先駆として,演劇史上に重要な位置を占める。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジョデル」の意味・わかりやすい解説

ジョデル
Jodelle, Étienne

[生]1532. パリ
[没]1573.7. パリ
フランスの劇作家,詩人。生涯についてはほとんど不明。プレイヤッドに参加。 1553年頃国王アンリ2世の前で悲劇『囚われのクレオパトラ』 Cléopâtre captiveを上演,大成功を博し,宮廷付作者となったが,後年は不遇であった。ほかに,喜劇『ウジェーヌ』 Eugène (1552) ,ウェルギリウスに拠った悲劇『犠牲となるディド』 Didon se sacrifiant (55) がある。三一致の法則をほぼ遵守し,合唱を加えてギリシア劇を模倣し,17世紀古典悲劇の先駆をなしたといえる。

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