日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジロボウエンゴサク」の意味・わかりやすい解説
ジロボウエンゴサク
じろぼうえんごさく / 次郎坊延胡索
[学] Corydalis decumbens (Thunb.) Pers.
ケシ科(APG分類:ケシ科)の多年草。全体が柔らかい。地下に径約1センチメートルの塊茎があり、そこから花茎と根出葉が出る。葉は2回3出羽状複葉で、小葉は倒卵形ないし倒披針(とうひしん)形。茎葉は2枚で根出葉に比べて小形である。4~5月、数個の紅紫色花を小形の総状花序につける。花弁には距(きょ)がある。果実は蒴果(さくか)で線形、いくらかくびれて数珠(じゅず)状になる。種子は黒色。山麓(さんろく)、林の道端などに生え、関東地方以西の本州から九州、および中国、台湾に分布する。伊勢(いせ)地方ではスミレのことを太郎坊、本種を次郎坊とよんで花どうしを絡み合わせ、ひっかけて勝負する遊びがあり、それが名の由来といわれる。
[寺林 進 2020年2月17日]
薬用
漢方では塊茎を延胡索(えんごさく)といい、アルカロイドを含有し、鎮痛、浄血剤として胃痛、腹痛、頭痛、月経痛、打ち身、腫(は)れ物などの治療に用いる。中国ではチョウセンエンゴサクC. turtschaninovii Besserとその栽培変種、およびコリダリス・レペンスC. repens Mandl. et Muchld.、ヤマエンゴサクC. lineariloba Sieb. et Zucc.をおもに用いる。
[長沢元夫 2020年2月17日]