日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジンチョウゲ」の意味・わかりやすい解説
ジンチョウゲ
じんちょうげ / 沈丁花
[学] Daphne odora Thunb.
ジンチョウゲ科(APG分類:ジンチョウゲ科)の常緑低木。中国原産で、室町時代にはすでに日本で栽培されていた。中国名は瑞香。高さ約1メートル。枝をよく分け、樹皮にじょうぶな靭皮(じんぴ)繊維があって折れにくい。葉は厚い革質で互生し、倒披針(とうひしん)形で長さ5~10センチメートル、縁(へり)に鋸歯(きょし)はない。雌雄異株。3月ころ、枝先に20個ほどの香りのよい花が頭状に固まって開く。萼(がく)は長さ約1センチメートルの筒状で上部が4裂して花弁のようにみえ、外面は紅紫色、内面は淡紅白色で毛はない。雄しべは8本、側面につく。日本に植栽されているものは雄株が多くて結実しない。雌株は7月ころ楕円(だえん)状球形の液果をつけ、7月ころ赤く熟す。
品種のシロハナジンチョウゲは花は純白色。ウスイロジンチョウゲは花の外面は淡紅色で、内面は白色。フクリンジンチョウゲは葉の縁に白い斑(ふ)が入る。名は、花の香りがよいので、香料の沈香(ちんこう)と丁字(ちょうじ)に例えてつけられた。適湿の肥沃(ひよく)地でよく育つ。大きくなった株は移植が困難である。繁殖は梅雨期に挿木するとよく活着する。
[小林義雄 2020年10月16日]