(読み)ジ

デジタル大辞泉 「じ」の意味・読み・例文・類語

じ[助動]

[助動][○|○|じ|(じ)|(じ)|○]活用語未然形に付く。
打消しの推量を表す。…ないだろう。…まい。
「人の心にはつゆをかしからと思ふこそ、またをかしけれ」〈・一三〇〉
打消しの意志を表す。…ないようにしよう。…まい。→まじ
「(双六すぐろくハ)勝たんと打つべからず。負けと打つべきなり」〈徒然・一一〇〉
[補説]連体形の例は少なく、已然形も「こそ」の結びとして用いられるだけである。室町時代以降、「まい」「まじい」に吸収され用いられなくなる。

じ[接尾]

[接尾]体言に付いて、シク活用形容詞をつくる。
…ではない、…に関係ない、などの意を表す。「とき
それらしいさま、そのようなようす、などの意を表す。「男」「鴨
[補説]2は、一般に「じもの」の形で用いられる。→じもの

じ[五十音]

」の濁音。硬口蓋の有声破擦子音[dʒ]と母音[i]とからなる音節。[dʒi]
[補説]清音「し」に対する濁音としては、本来、硬口蓋の有声摩擦子音[ʒ]と母音[i]とからなる音節[ʒi]が相当するが、現代共通語では一般に[dʒi]と発音する。しかし、[ʒi]とも発音し、両者音韻としては区別されない。古くは、[dzi](あるいは[dʒi][ʒi])であったかともいわれる。室町時代末には[ʒi]と発音され、近世江戸語以降[dʒi]と発音された。

ジ(〈ギリシャ〉di)

数の2。「エチレングリコール」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「じ」の意味・読み・例文・類語

  1. 〘 助動詞 〙 ( 活用は「○・○・じ・じ・じ・○」。用言・助動詞の未然形、ただし、形容詞活用語にはカリ活用語尾に下接する )
  2. まだ実現していない事柄に対する打消の推量を表わす。ほぼ助動詞「む」の打消にあたる。…ないだろう。
    1. [初出の実例]「若ければ道行知ら士(ジ)(まひ)はせむ下への使負ひて通らせ」(出典:万葉集(8C後)五・九〇五)
    2. 「かの国の人きなば、たけき心つかう人も、よもあらじ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  3. まだ実現していない話し手自身の行為に対する打消の意志を表わす。…しないつもりだ。…しないようにしよう。
    1. [初出の実例]「泣か士(ジ)とは 汝(な)は云ふとも 山処(やまと)の 一本薄(ひともとすすき) 項傾(うなかぶ)し 汝が泣かさまく」(出典:古事記(712)上・歌謡)
    2. 「鎌倉の見越の崎の岩崩(いはくえ)の君が悔ゆべき心は持た自(ジ)」(出典:万葉集(8C後)一四・三三六五)

じの語誌

( 1 )成立に関しては、「あゆひ抄‐四」が「『じ』は『ず』の立居(活用)也」というように、「ず」との関係が考えられる。
( 2 )上代において、活用形は終止形にほぼ限られる。また、已然形の例は確認されていない。
( 3 )中古においても、狭義の係り結び(「ぞ」「なむ」「や」「か」「こそ」の結び)とならず、接続法(「…じど」「…じば」の形)にも用いられないため、連体形、已然形の用法は活発でない。「源氏‐玉鬘」に「負けじ魂」とあるのは連体形の例だが、已然形については、中古に確かな例がない。
( 4 )中世になると、「こそ」の結びの例が見られる。ただし、この時期には「こそ」が係助詞としての機能を失いつつあり、副助詞化している可能性がある。よって、「じ」の已然形として積極的に認めることはできない。


  1. 〘 接尾語 〙 名詞に付いて、シク活用の形容詞をつくる。それらしいさま、それのような様子の意を表わす。「時じ」「男じ」「鴨じ」など。
    1. [初出の実例]「びんぼじく成るわろでこそあれ」(出典:雑俳・千枚分銅(1704))

  1. 〘 接頭語 〙 ( [ギリシア語] di ) 数の二を表わす。「ジエチレングリコール

じ【じ・ジ】

  1. ( 「し」の濁音 ) ⇒し(し・シ)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「じ」の読み・字形・画数・意味


8画

(異体字)
12画

[字音]

[説文解字]
[甲骨文]

[字形] 象形
〔説文〕九下に正字をに作り、「野牛の如くにして色、其の皮は堅厚、鎧(よろひ)を制(つく)るべし。象形」(段注本)という。上部は角の形。〔周礼、考工記、函人〕に甲六属の名がみえ、武具の材とした。また角は酒器に用いて「(じこう)」という。〔詩、周南、巻耳〕に「我姑(しばら)く彼のむ」の句がある。いま青銅器とよばれるものには、という器名をしるすものはなく、巵(し)の上に獣形の蓋(ふた)のあるものを、その名でよんでいる。

[訓義]
1. けものの名、水牛に似て青色、一角、重さ千斤という。
2. 犀の雌。
3. 水中の大獣。よく舟を覆すという。

[古辞書の訓]
名義抄 コマイヌ

[熟語]

[下接語]
・虎・犀・水・青・蒼・大・搏・麋・伏・奔・猛・野


8画

[字音] ジ(ヂ)

[説文解字]

[字形] 形声
声符は尼(じ)。尼は人を後ろから擁する形で、昵(なじ)む意がある。そのようなときの話しかたを語という。〔玉〕に「喃(ぢなん)、小聲多言するなり」とみえる。燕の声をもそれになぞらえていう。

[訓義]
1. こごえでいう、小声多言、ひそひそ声でいう。
2. 語末にそえる疑問の助詞。
3. つばめの鳴く声。

[古辞書の訓]
〔字鏡集〕 コトトモリ

[熟語]

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

化学辞典 第2版 「じ」の解説



di

ギリシア語に由来する数詞2を表す接頭語.1分子内に同じ置換基や官能基が2個ある場合の命名に用いる.ジブロモエタン,N,N-ジメチルホルムアミドなど.[別用語参照]ビス

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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