ローマ帝政初期の伝記作家。小プリニウスの友人。ローマの騎士階級の家の生まれ。ハドリアヌス帝の秘書を務めたが、121年(一説では122年)皇帝の不興を買い解雇されてからは著作に専念した。かなりの長命であったが、晩年についてはよく知られていない。現存する2作品からは伝記作家の印象が強いが、伝記以外にも多岐にわたる主題についてラテン語とギリシア語で著述を行った。『名士伝』は、詩人、文法家、修辞家、弁論家、歴史家の伝記で、大部分は散逸し、一部が現存するのみ。現存するものには、テレンティウス、ホラティウス、ルカヌスの伝記が含まれている。『皇帝伝』は、ほぼ完全に残っている彼の主要作品で、ユリウス・カエサルとアウグストゥス、ティベリウスからドミティアヌスに至るまでの合計12人の伝記である。これには、秘書時代に利用できた帝室古文書保管所の資料が生かされている。史的洞察には欠けるが、平明な文体による逸話の数々は興味深く、3世紀初めにはマリウス・マクシムスがこの続編を書いている。
[木村健治]
『角南一郎訳『ローマ皇帝伝 上』(1974・現代思潮社)』
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…ほかにウェレイウス・パテルクルスVelleius Paterculus,クルティウス・ルフスCurtius Rufus,フロルスなどの歴史家の名がみられる。またそのほかの散文作家には,小説《サテュリコン》の作者ペトロニウス,百科全書《博物誌》の著者の大プリニウス,《書簡集》を残した雄弁家の小プリニウス,農学書を残したコルメラ,2世紀に入って,《皇帝伝》と《名士伝》を著した伝記作家スエトニウス,哲学者で小説《黄金のろば(転身物語)》の作者アプレイウス,《アッティカ夜話》の著者ゲリウスなどがいる。 詩の分野ではセネカの悲劇のほかに,叙事詩ではルカヌスの《内乱(ファルサリア)》,シリウス・イタリクスの《プニカ》,ウァレリウス・フラックスの《アルゴナウティカ》,スタティウスの《テバイス》と《アキレイス》など,叙事詩以外ではマニリウスの教訓詩《天文譜》,ファエドルスの《寓話》,カルプルニウスCalpurniusの《牧歌》,マルティアリスの《エピグランマ》,それにペルシウスとユウェナリスそれぞれの《風刺詩》などがみられる。…
※「スエトニウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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