日本大百科全書(ニッポニカ) 「スティグラー」の意味・わかりやすい解説
スティグラー
すてぃぐらー
George Joseph Stigler
(1911―1991)
アメリカの経済学者。東欧からの移民の子として、ワシントン州シアトル郊外のレントンに生まれる。1931年ワシントン大学を卒業、1932年にノースウェスタン大学ビジネススクールでMBA(経営学修士号)を取得したのち、シカゴ大学の大学院に進み、1938年「生産と分配の理論」Production and Distribution Theoriesにより博士号を取得した。シカゴ大学ではF・H・ナイト、J・バイナー、H・C・サイモンズの影響を受ける。1936年から1938年までアイオワ州立大学、1938年から1946年までミネソタ大学、1946年から1947年までブラウン大学、1947年から1958年までコロンビア大学などでの教職を経て、1958年にシカゴ大学教授となった。
スティグラーは、1940年代から1950年代にかけて、産業組織の分析を中心としたミクロ経済学についての論文や著作を多く発表し、とくに1947年出版された『価格の理論』The Theory of Priceはミクロ経済学の標準的な教科書として評価を得た。彼は、競争市場の効率性を強調するシカゴ学派の代表として、価格理論を応用した産業組織論を展開し、ハーバード学派の提唱する反トラスト政策に対抗して、政府の介入しない自由な市場経済を強調した。また1961年に発表した論文「情報の経済学」The Economics of Informationにおいて、従来あまり重視されていなかった、価格決定における情報がもつ役割を分析して、独創的理論を展開した。1982年「産業構造、市場機能、公的規制の原因と効果についての研究」によってノーベル経済学賞を受賞した。
[金子邦彦]
『G・J・スティグラー著、松浦保訳『生産と分配の理論――限界生産力理論の形成期』(1967・東洋経済新報社)』▽『G・J・スティグラー著、神谷傅造・余語将尊訳『産業組織論』(1975・東洋経済新報社)』▽『G・J・スティグラー著、南部鶴彦・辰巳憲一訳『価格の理論』(1991・有斐閣)』▽『マリル・ハート・マッカーティ著、田中浩子訳『ノーベル賞経済学者に学ぶ現代経済思想』(2002・日経BP社)』