ステゴドンゾウ(読み)すてごどんぞう(その他表記)stegodon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ステゴドンゾウ」の意味・わかりやすい解説

ステゴドンゾウ
すてごどんぞう
stegodon
[学] Stegodontidae

絶滅したゾウの1グループ。化石は、アジアの諸地域(インド亜大陸、東南アジア、中国大陸、台湾、日本列島およびそれらの周辺の海底)から知られ、アフリカ大陸からも産出が報告されている。臼歯(きゅうし)のかみ合わせの面に、とがった屋根状の稜(りょう)が平行に走っていることからステゴドンと名づけられた。すなわち、ギリシア語で屋根を意味するステゲstegeと、歯をさすオドントスodontosをあわせたものが名前の由来である。このゾウの化石がたくさん出土している中国では、臼歯の稜の形が剣のようにみえることから剣歯象という名前がつけられている。

亀井節夫

分布・種類・形態

ステゴドンゾウは、アジア各地で約2000万年前の中新世の地層から発見されているステゴロホドンというゾウを先祖として、鮮新世から更新世にアジアの各地域で繁栄した。この先祖のステゴロホドンとステゴドンとをあわせたグループが、今日ではステゴドンゾウ(ステゴドン科)とよばれている。ステゴドンゾウには、アジアのみならず東アフリカのウガンダやレバントLevant(地中海東岸)まで分布を広げたものもあった。

 ステゴドンゾウには、インドのガネッサゾウや中国北部のコウガゾウ、日本のミエゾウあるいはシンシュウゾウのように、肩の高さが3メートルを超す巨大なものから、島に住むことによって矮小(わいしょう)化したとされるインドネシアのトリゴノセファルスゾウ、ミンダナオ島のミンダナオゾウや日本のアケボノゾウなど肩の高さが1.5メートルぐらいの小さなものまで、大小さまざまなものが知られている。体全体の形は、現存するアフリカゾウやアジアゾウと大きく変わらないが、頭が細長く、頭頂部は幅広く平坦(へいたん)であり、長い上顎(じょうがく)の左右の牙(きば)はまっすぐに平行に伸びていた。歯の形態から木の葉を主食とする葉食(ようしょく)性と考えられ、暖温帯の森林生活者であったとされている。

[亀井節夫]

日本列島の種

日本におけるステゴドンゾウとしては、鮮新世の大形のミエゾウまたはシンシュウゾウ、更新世前期の小形のアケボノゾウ、更新世後期の中形のトウヨウゾウが代表的である。瀬戸内海の海底、とくに明石(あかし)海峡からは、古くからたくさんの骨や歯の化石が漁網にかかって引き上げられ「アカシゾウ」ともよばれてきたが、ショウドゾウ、カントウゾウなどとともに、1915年(大正4)に松本彦七郎(ひこしちろう)(1887―1975)によって命名された石川県産のアケボノゾウと同種であることがわかって以来アケボノゾウの呼称が一般的となっている。日本のいくつかの博物館(兵庫県立人と自然の博物館、大阪市立自然史博物館、滋賀県多賀町博物館、神奈川県立生命の星・地球博物館など)では、それぞれの地方で発掘されたアケボノゾウの全身の復元骨格が展示されている。

[亀井節夫]

『亀井節夫著『日本の長鼻類化石』(1991・築地書館)』『亀井節夫著『日本に象がいたころ』(岩波新書)』『小西省吾「アケボノゾウの骨格復元とその特徴――加賀標本を例として」(『地球科学』第54巻第4号所収・2000・地学団体研究会)』


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