日本大百科全書(ニッポニカ) 「スピライト」の意味・わかりやすい解説
スピライト
すぴらいと
spilite
玄武岩の一種。古い地質時代の海底に噴出したと考えられる玄武岩のなかには、主成分の斜長石が、普通の玄武岩のようにカルシウムに富むものでなく、ナトリウムに富む曹長(そうちょう)石であるものがしばしばみいだされる。この種の玄武岩は、したがって曹長石と輝石を主成分とし、かなりの量の緑泥石やチタン石(くさび石)を含む。化学組成上も普通の玄武岩に比べてナトリウムに富みカリウムに乏しく、K2O/Na2Oが著しく低い。このような岩石をスピライトという。スピライトは造山帯地域に多いため、このような地域ではスピライト系列という一群の火成岩の生成が特徴的であると考えられたことがあった。しかし現在では、大洋底の玄武岩が生成後、比較的低温の変成作用を受けたため、斜長石が曹長石に、橄欖(かんらん)石やガラス質が緑泥石に変質し、それに伴って化学組成もいくらか変化して、スピライトになったものと考えられている。日本の中生層や古生層に含まれている緑色岩は、鉱物組成や化学組成の上で、スピライトであることが多い。命名はギリシア語で汚点という意味のspilosに由来する。
[橋本光男]