日本大百科全書(ニッポニカ) 「スワヒリ」の意味・わかりやすい解説
スワヒリ
すわひり
Swahili
東アフリカのケニア、タンザニア、モザンビークの海岸地域に住むスワヒリ語を母語として話す人々。人種的・部族的に独立した集団ではなく、だれが「真のスワヒリ人」かというのはむずかしい問題である。たとえば、1989年のケニアの国勢調査で自らをスワヒリ人として申告した人はわずか1万4000人ほどである。しかし最初に述べたような意味でのスワヒリ人の人口は約100万(推定)と考えられている。スワヒリ語は、この海岸地域に古くから住んでいたバントゥー系の人々のことばとアラビア語が混交してできあがった言語で、ケニア、タンザニア、ウガンダを中心とする東アフリカ一帯で共通語としても用いられている。
スワヒリ人は12世紀までには独自の言語と文化をもつ民族として出現していた。彼らは小都市国家を形成し、後代に石造りの宮殿やモスク、年代記、鋳造貨幣などを残した。こうした都市国家群のなかで代表的なものは、パテ、キルワ、ザンジバル、ペンバなどで、アラブ圏やインド、アフリカ内陸部を結ぶ交易(金や奴隷を含む)によって栄えた。スワヒリ人のアイデンティティを形づくっているのは言語(スワヒリ語)と宗教(イスラム教)である。スワヒリ語は古くからアラビア文字で表記され、優れた年代記や文学の伝統を残している。またスワヒリ人はイスラム教徒であることでより広いイスラム世界とも結び付いている。
[加藤 泰]